第7話 駐車場にて

酒屋の駐車場での話だ。

車の停め方で人格というのは解るものである。


斜めに停める人 バカですよ~と云わんばかりの装飾した車 ステレオの音量MAXの車。


利用する側のモラルも問題となるが、提供側の問題もある。


やたらと狭いスペース 軽以外は停車が無理だろ!という区切り。


駐車場とは問題の起こる場所である。


他人が共有するスペースではモラルが問われるものだ。


1台の車が、方向指示も出さずに駐車場へ入ってきた。

白線のど真ん中に停車し、タバコを咥えたまま店内へ入ってきた。


当時、その店で店員として働いていた私は、タバコを注意した。

「なんだ!店員のくせに!」

「店員だから注意するんです、勘違いしないでください。他のお客様はアナタのような人間に関わりたくないので誰も注意してくれませんよ」


ちょっと店内で拍手が起こった。


調子乗りの私は立て続けに

「大体、車の停め方も周囲無視の自分勝手ですよね」

私の胸ぐらを掴みかかる男。

気が弱いのだが、口が止まらない性格の私は

「あなた、そもそも教習所の先生でしょ、アナタが模範にならなければならないんじゃないですか?」


拍手が大きくなった。


そう、その男は自動車教習所の教官である。

制服のまま、教習車で酒を買いに来たのだ。


「勤務時間中ですよね、電話しますよ、教習所に」


すでにアルバイトの大学生が電話に手を置いている。


「〇〇さま どうされますか?」

制服の名札を見て名前で問いかけてみた。


しばしの沈黙のあと、黙って店から出て行った。


私は、その教官を知っていた。

通ってるときから、態度が悪い男であった。

助手席で足をフロントガラスに投げだし、寝ているのだ。

補助ブレーキに足を掛けてないのである。

この態度で路上教習するのだ。


そのことを指摘すると

「他人にブレーキ踏ませるようなヤツにハンコ押せねぇな~、そんな腕で路上出んなよバカ!」


「足が臭せぇから降ろせって言ってんだよ!」


大喧嘩になったのである。


あんなのが、教官やってることが不思議であったが、あれから5年、まだ現役で教官続行しているとは、あの教習所のモラルも低いと言わざる得ない。

あそこで習うんだもん、地域の運転モラルが低いのも、しかたないのかもしれない。


『File No7 道徳の無い原紙とそのコピーの結末』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る