第6話 音楽祭にて

小学校の音楽祭、市民ホールで行われた学校対抗の音楽祭。

ここで、一際、会場を沸かせた小学校があった。


女性の指揮者、おそらくは音楽の先生だろう、会場に深々とお辞儀をして背を向け指揮棒をスッと構える。


ヒュッと指揮棒を振り下ろすと各楽器から音が放たれる。


音は指揮棒に導かれながら、紡がれ、音楽となりホールを満たしていく。


数分すると、会場から「ほぉ~」という静かな歓声が洩れだした。


指揮者が身を揺らす度に客席はざわつき、吐息のような声がにわかに大きくなる。


音楽に無縁の私も、ステージに視線を釘づけにされた。


指揮者が指揮棒を振る度に、ブラウスのファスナーが開いていくのだ。

薄い黄色のブラウスがジッジジッと開いていく。

ブラジャーが丸見えになると、会場のボルテージはMAXである。


このままタイトスカートのファスナーも……そんな期待をせずにいられなかった。


パックリと開いたブラウスから照明に照らされた背中とブラジャー。


指揮者が指揮棒をピシッと止め、音楽が鳴りやんだ。

会場に向き直り一礼する指揮者。

わぁーっという歓声と拍手が指揮者に送られた。

あまりの反応に、口元を押さえて、もう一度深々とお辞儀する指揮者。

ステージの袖に下がるまで拍手が送られていた。

「あのすばらしいステージをもう一度」

そんな想いが胸を過った。

「アンコール!アンコール!」

私は心の中で叫び続けた。


『File No6 歓声の意味を解せぬ指揮者コンダクター


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