7 弁護士
仕事を辞めた私に残されたのは
借金の山
アパートも引き払い荷物も売り払い
携帯もすでに料金未払いがかさんで通話不能になっていた
仕事を辞めたことでわずかながら退職金が出るはずだったけど
よく考えたら厚生事業で借りたお金がそのままだったし
そっちの補填に使われてるよね、と、自分を納得させた
宛てのない車中生活が始まった
幸いだったのが
住所不定になったため
借金の督促から解放されたこと
久しぶりにドロのように眠った
24時間スーパーの駐車場の隅を転々としながら日々を過ごす
そんな中
県庁で無料法律相談をしていたのを思い出した
弁護士は
開口一番
「もっと早く相談してくれていれば、君は辞めなくてすんだのに」
そう言うと
弁護士は私が上司から受けた処遇を細かく質問し始めた
この日は
数日ドロのように眠れていたこともあり
あまりイヤな思いをすることもなく話をすることが出来た
調書をまとめた弁護士は連絡先を教えて欲しいと言った
正直に今は車中生活であることを告げると
どうにか働き口を見つけて頑張って欲しい、と
借金関連の明細などを少しでも多く集めて次回持ってきてほしいと言われた
次に指定されたのは1週間先
この間
私は再び車中生活を続けた
まだ働こうという気力が起きなかったのと
すぐにドロのように眠ってしまうため
日中
ほとんど起きていられない
この1週間
何も口にしないまま弁護士の元を訪れると
弁護士はびっくりしながらお茶とケーキを出してくれ
「話はあとでいいからすぐ食べなさい」
そう言ってくれた
でも
不思議とお腹はすいてなく
ケーキも2口食べただけで気持ちわるくなり、あとは残した
この日
弁護士から思いもよらない話
「あなたの元上司が、あなたに迷惑料を支払いたいそうです」
その言葉
私は意味が理解出来ず
しばらく呆けた
上司が私に行っていた行為には
いくつもの法律違反が含まれていたそう
それが原因で私が仕事を辞めたのは明白であり
私には裁判を起こす権利がある
それを弁護士から伝え聞いた元上司は
金を払うので裁判は勘弁してほしい
そう言って文字通り弁護士に泣きついたそうだ
そう言われても
この時
ほとんど思考停止状態に陥っていた私には
言われている言葉の意味がよくわからなかった
むしろ
またあの元上司の顔を見なければならないのか
その恐怖心の方が強かった
借金に関しては
自己破産することも出来るけど
この上司からの示談金で十分まかなえるはずなので
待ってはどうかと言われたのだが
このお金は
実家との負の記憶なので
私は自己破産することを決めた
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