4 発覚

翌日年休をとった


普通、自己申告でとれるはずの有給休暇


内容まで詳しく言う必用はないはず



上司は


「どこへ行く?」

「何しに行く?」

「用件は?」

「帰宅時間は?」

「これを全部私が納得するように言わないと年休は認めない」


執拗にそう言われた


私はいたたまれなくなり、話し途中で電話を切った


すぐに職場から折り返し


私は出る勇気がなく


すぐに携帯電話をOFFにした



その後


車で実家に向かった


時間にして2時間


必死ぶりに帰った実家は、特に代わり映えしていなかった


ガレージには車が2台


気のせいか1台は新車に見えなくもない


実家には鍵がかかっていた


仕事を探していると言っていた弟は職探しにいっているのかも


父もひょっとしたらそうなのかも


でも


母までいないのはなんで?


母は基本家から出ない人


ちょっとした買い物も全部父にまかせ


家の中


我が物顔でふんぞり返ってる人



学生時代


当時付き合っていた彼から貰ったラブレターを


勝手に見


勝手に破り


勝手に彼の連絡先を調べ


勝手に電話し


「あんたみたいなしがない会社員の子供にウチの娘は釣り合わないから別れて」


この一件のせいで


学生時代の私には


以後1度も彼氏が出来なかった


あいつの母親は怖い




そんな母も不在


なんとなくイヤな予感がした


「あら、帰ってたのかい?」


となりのおばちゃんが、笑いかけてくれた


「母、知りません?」


私の問いに、おばちゃんは


「この時間なら、あそこだね」


言われてたどり着いた先はパチンコ店だった



おばちゃんの話しによると


父が首になる少し前から


母はパチンコにのめりこんでいたそうだ


父の給料のほとんどをパチンコにつぎ込み


足りなくなったお金は消費者金融で借りていたそうだ


いつ頃からか


このパチンコ通いに弟も加わったそうだ


そして


首になった父もこのパチンコ通いに加わったそうだ



どこからそんなお金が?



私はやっと理解した


私が毎月送っていたお金が何に使われていたのかを



パチンコ店に入る


母はすぐに見つかった


台を叩き、出ないと大声を上げていた


その横には、父と弟


よく見ると


母の鞄からは、私がおとつい送ったばかりの現金書留の封筒がはみ出していた



ここで


ようやく母は私に気がついた


平日の昼間


私がいることにびっくりした顔をする母


第一声は


「仕事をさぼって何してんだい、この子は」


私は


一言だけ言った


「縁を切ります……2度と連絡してくるな」


その足で


私は市役所に行った


すぐに転籍の手続きをし、あの家族の戸籍から抜け出した。


そのまま


すぐに家に戻った


そこには上司がいた


怒られるのかと思ったら


上司はひどく怯え、憔悴していた



あとでわかったことだけど


この時、この上司は自分が言い過ぎたことに気づき大慌てしていたのだそうだ

もし私が自殺でもしたら

この上司が何をしていたのかまで発覚してしまう

つまり

この時点でこの上司は

私に対してやり過ぎていたという自覚はあったのだ



上司は


起こることはせず


「お前は疲れているんだ」

「一度病院に行ってこい」

「明日行ってこい」

「今日と明日は年休扱いにしてやる」


そう言い


「明日絶対その病院に行くように」


そう念押しして帰って行った


その病院は

心療内科だった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る