3 悪化
「あんたね、来月から15万振り込みなさい」
唐突な母の電話
仕事場に
一方的にそう告げて切れた電話に
私は言いしれぬ恐怖を感じていた
その恐怖はすぐに現実の物になった
「来月は20万」
「来月は25万」
どんどんエスカレートする要求額
借りた200万はあっという間に尽きた
結局
私はあの消費者金融に再び足を運んだ
20代の公務員の給料なんてたかが知れている
仕事がしっかりしているから借りることは借りられる
でも
返済はそうはいかない
返すために借りる
そんな悪循環が始まり
私は毎日お金の心配をするようになった
このせいで、ケアレスミスが多くなり
何度か上司に説教をくらう羽目になった
「何か心配事があるのなら相談にのるから」
そう言った上司は一言付け加えた
「お金の事以外ならね」
私は、相談出来ることがなくなったと感じた
この上司は
ミスの多くなった私を監視するようになった
気がつけば後ろに立ち
私の後ろから手元をジッと見つめている
時には
出かけたと思ったら窓の外から監視されていたこともある
ある日
私の後ろの天井に黒い物が設置された
その時の私はわからなかったのだけど
これは私を監視するためだけに設置された監視カメラだった
この頃
同僚の1人がこっそりおそえてくれた
私に定期的にかかってくる母からの電話
その内容をあの上司が盗聴し
私が金に困っていることを知っている
そんな私が横領すると決めつけて
こうして監視を強めているのだ、と
脱力するって、こういうのなんだ
それほど、ひどい脱力を感じた
もうこれはダメだ
実家に行き
家族と相談しないと私は首になってしまう
そう
これが家族のことを家族と思った最後の日
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