1 父の失職

最初の小さなつまずきは実家


父が職場を首になったこと


ふ~ん、そう?


当時私はそれくらいにしか思わなかった


実家には弟がいた


私はもともと母と折り合いが悪く家を出ていた


実家にもろくに帰りもしないし


実家も何も言ってこない


そんな実家の母が父の首を連絡していたとき


ふ~ん、そう?


それだけしか思わなかった。



翌日


昼間に携帯がなった


当然仕事中


実家から


慌てて離席し受ける


相手は母


「お前、実家に金を出しなさい」


は?


「お父さんが首になって家の生活が苦しいのよ」


はぁ


「お前長女でしょう? 月に10万、頼んだよ」


チョット待ってよ


私の月の手取りは12万だよ


将来のために5万円毎月給料天引きで貯蓄


何言ってんのこの人


「あんたの生活のことなんて知ったこっちゃない」


「私達が電気を止められてもいいの?」


「水道も使えなくなってもいいの?」


そんな一方的にまくしたてないでよ


今、仕事中だよ、私


すぐに考えなんかまとまんないし


そもそも月10万なんて援助出来るわけがない


弟は?


会社つとめの弟はどうしたの?


「あの子はとっくに仕事をやめて、今は自分にあった仕事を探してるよ」


なにそれ?


そんなの今はじめて聞いたよ


「だから月10万、びた一文まかんないよ! わかったね」


一方的に切れた電話


呆然とするしかない私


そのまま席に戻る


「何かあった? 顔色悪いよ?」


同僚が心配して声をかけてくれる


大丈夫、ありがとう


そこで再び携帯がなり始めた


慌てて取り出すと、また実家


今は話したくない


電話を切り


携帯をOFFにした


とにかく


月10万、どうしたらいいの?


「電話だよ、1番」


そんな私に、同僚から声


手元も受話器をあげ、1番を押す


「言い忘れたけど、1回目の10万はすぐに送ってよね、わかったね」


母からだった


一方的にそれだけ言うと電話は切れた

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