5.

 どうしてこうなっちゃったんだろう?

 自室のベッドの上、クッションに顔を埋める。

 親友だった。だけど憧れていたクラスメイトが彼女に好意を寄せていると気付いた時、自分の中に今までなかった感情が芽生えたのだ。

 嫉妬。認めてしまえば、後は坂を転げ落ちるように早かった。


「違う……本当は……それだけじゃない!」

 いつも友達グループの中心にいた。成績も良くて、スポーツも万能で。

 何より可愛くて、それでいて気取らず優しくて。

 誰もが彼女を好きにならずにいられなかった。愛さずにはいられなかった。

「そんなの……」

 ズルイ、ズルイ、ズルイ……!

 それが当たり前だと思っていたに違いないんだ。

『ずっと親友だよ』

「違う、違う、違うっ! 私は悪くない……っ!!」

 だけど、どんなにそう思っても思い出すのは亡くなった少女の優しさだった。

 天使のような笑顔だった。


 放課後。コンビニの前、去って行く二人を見送る。

「ねぇ」

 声をかけ、振り向いた鬼のような形相に息を呑んだ。

 何も言わずに去ろうとした見知らぬ少年を追いかける。

 やっと立ち止まってくれた時は、話を聞いてくれると安堵した。

「何だよ?」

 怖かった。でも口を付いて出たのは、一歩間違えれば彼の神経を逆撫でしてしまうかもしれない質問だった。

 しかし、これは賭けなのだ。

「あの子の事、好きなんでしょう?」

 図星だった。真っ赤になり、今は加害者となった少年は俯く。

 そして、また黒い感情が芽を出し、悪意の花を咲かせていく。

「協力、しよっか?」

「え?」

 夕映えに浮かんだ少年の表情には、強い戸惑いが満ちていた。

 影になっていた少女の顔は見えなかった。

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