第30話 強敵の頭を飛び越えて

 なお、余談ではあるが。

 本作品で、少なくとも本章で、ジュウシ&プリムVS四天王白虎将軍の熱いバトルの様子を描くつもりは、無い。

 俺に任せて先に行け、がお約束であると同時に、任された仲間が四天王を相手に白熱の戦いを繰り広げる様子を描くこともまた、物語の臨場感を増すお約束の演出ではあるが、忘れることなかれ。これはノリと勢いだけのクソストーリー、アジフライ英雄譚である。素直にお約束を守るわけがない。

 白虎将軍の後、四天王がもうひとりと、大本命のにゃん黒大魔王との戦いが控えているのだ。ひとつの戦闘シーンを真面目に書くと3,000字になるとして、律儀に全部の戦闘シーンを書くと9,000字。大魔王とのラストバトルが特に熱くなることを考えると、10,000字を超える計算になるのだ。

 10,000字を超える戦闘シーンを書くと、大きく分けて三つの問題が発生する。一つ目は、作者ザ・にゃんこの文章力と発想力では、絶対途中でグダるということ。二つ目は、あんまり戦いが白熱して、大量の血が流れるような展開になると、【残酷描写あり】の注意書きとタグ付けをしなくてはいけなくなって、アジフライ英雄譚がまさかのR15小説になってしまうということ。三つ目は、単純に作者がクソめんどくさいということ。

 そう、めんどくさいのだ。限界突破系の厨二病魔法熱狂油界オーバーフライが初登場するギトニャン戦や、冷凍アジフライ属性魔法アイスコボネストームが活躍するスカル・ザ・ドラ戦は、書いてて楽しかったから、2,000字3,000字と膨れ上がっていっても大丈夫だったのだ。

 だが、今回の四天王戦はなんだ。ジュウシは魔法を使わないので新技を出しにくく、プリムも精々強力な回復魔法を使っておーすげーとなるのが関の山。敵の白虎将軍のほうもギトニャンとかぶる肉体派。どう頑張っても男どもが殴り合い、そこにプリムが回復魔法をちょこちょこ挟むだけの泥試合だ。

 書いてて楽しくない、読んでも多分楽しくない。こんなものをわざわざ3,000字もかけて描写する必要があるだろうか、いや、ない。

 ゆえに四天王白虎将軍との戦闘シーンは割愛する。10,000字の公害が垂れ流しにされる恐れは無くなった。危機は去ったのだ。

 さて、ここで、一部の聡い読者諸君の頭の中には、次のようなツッコミが生まれていることだろう。


「文字数の無駄遣いを嫌っているのに、なぜ戦闘シーンを割愛するためのどうでもいい言い訳に、ズラズラと文を並べ立てるんだ! こんな言い訳、読んでても全然楽しくないぞ!」


 そのツッコミへの答えは、ただひとつ。




 戦闘シーンを省いたせいで第30話がたった200字そこそこで終わりそうになっちゃったので、字数稼ぎをしたかったからである。




 諸君は私の字数稼ぎの茶番に巻き込まれたのだ。そう、これは茶番。ゆえに、文字数の無駄遣い云々の理論の矛盾に気付くほど、真面目にこの文章を読んでしまったのが、そもそもの間違いであったのだ。

 さて、良い感じに1,000字ほど稼げたところで、本編に戻ろう。




 第5階層の広間には、最後の四天王、猫又仙人が、静かに佇んでいた。目も口も隠れるほどに毛が長く伸びている、まさに仙人といういでたちの猫である。


「ここは僕に任せて先に行って」


「私も残るよ!」


「ふぉっふぉっふぉっ、勇気ある若者たちよ、その決意に免じて――」


「ありがとう、サック、ミスミ! 先に行くぜ!」


 猫又仙人のことはサックとミスミのカップルに任せ、アッツとダイヤは、最後の階層……にゃん黒大魔王が待ち構えている、猫万魔殿ニャンデモニウムの最深部へ、足を踏み入れたのであった。

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