第28話 山越え谷越え、魔を踏み越えて
元にゃん黒四天王ギトニャンの口は固かったが、
ただし、一日に一度だけ、日が傾き、西の空が茜色に染まる頃だけは、虚空を見つめ、一筋の涙を流しながら、
「……おばあちゃん……。」
と、一言呟くのであった。
「あ、これ聞いたことあるぞ。
「いや、これはもっと闇が深いやつだと思うんだぜ」
「そうなのか?」
「お前が犯人なんだから自覚を持つんだぜ」
気の抜けた会話を挟みながらも、アッツ、プリム、ジュウシ、ダイヤ、サック、ミスミ、ギトニャンの総勢7名を乗せて、馬車は進む。行き先は、
「しかし、サバフライ君はともかく、ミスミちゃんもついてきちゃって、ほんとに大丈夫なの?」
「だいじょうぶです! ご存知のとおり、私にも結界魔法の心得がありますから、サッキーの役に立てると思います!」
アッツは思った。サッキーって、サッキーって、彼氏だからって公衆の面前でニックネームで呼んでんじゃねぇよリア充爆発しろ、揚げ損なったクリームコロッケみたいに爆発しろ、と。
「まあ、そんなに危険な所には踏み込みませんよ。せいぜいアッツたちのサポートをするくらいです。
「つまり、サックたちが雑魚の相手をしてるうちに、俺たちが親玉をぶっつぶすわけだな!」
「そういうことだね。頼むよ、アッツ」
「任せろ! ……あ、でも、ギトニャンはどうしよう」
「俺も戦う」
ギトニャンが久しぶりに自我を目覚めさせ、自ら口を開いた。
「ここまで来たからには……俺も、戦う。にゃん黒軍団を、潰すためにな」
元にゃん黒四天王ギトニャンは、にゃん黒軍団を潰すと宣言した。
「俺はあのとき、お前に負けて実家に逃げ帰ったときに、もう悪さはしないと誓った。だが、それだけじゃ足りねェんだ。罪を償うなんて綺麗事を言うわけじゃねェが、散々迷惑撒き散らしておいて、もうしません、じゃ済まされねェ。もうしません、軍団ぶっ潰してきます、までいってこそ、男のケジメってもんだ。だから、頼む、アジフライ。俺を
その真紅の瞳には、偽りを示す濁りはなかった。
アジフライ属性魔法による洗脳がしっかり効いているようだ。
「それと、サバフライ。雑魚の相手は俺がする。お前はアジフライ達とともに行け」
「うん、分かった」
もし洗脳が不十分で、ギトニャンに裏切られれるようなことになれば、敵地のど真ん中で敵がさらに増えることになる。しかしアッツ一行に、洗脳の効果のほどを疑っている者など誰ひとりとしていなかった。それほどまでに、
「よし。プリム、ジュウシ、ダイヤ、サック、ミスミ、それからギトニャン。いよいよ最後の戦いだ。絶対、俺たちの手で……にゃん黒軍団を、ぶっつぶすぞ!」
「おー!」
一行は、アッツの口上に、拳をかかげて応える。
やがて馬車は、地下通路の出口にたどり着き――
アッツたちの最終決戦が、幕を開けた。
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