第26話 それから彼は歩き出す
聖剣「
遺品整理をしようと入った小屋で、プリムやジュウシ、ダイヤに向けての贈り物と、それを簡単に説明した手紙が見つかったのだ。
プリムには、マッスル
ジュウシには、希少な魔法鉱石から作られた、
そして、ダイヤには、ダンベル。これも剣聖自らテンドン山の重金属を加工した、重く、それでいて持ち運びのしやすい絶妙なバランスをわきまえた逸品である。
「って、なぜなのよっ!?」
「ダイヤさんは魔法で攻撃力も防御力も十分だから、あとは筋肉をつけてくれってことだと思うんだぜ」
「あたくしは氷精霊、つまり、氷よ! いくら鍛えたところで筋肉なんてつくはずがないのだわ!」
「何をおっしゃっているんですか、ダイヤさん。私のような天ぷらでも、筋肉をつけることができたのですよ」
「ええ……? そ、そうね、死んでるはずの揚げ物に筋肉がついたのだから、生き物ですらない氷だって……え? いやいや、あたくし達生きて、いや、死んで……? わ、わからないのだわ。あたくし達って、一体、どういう存ざ――」
「『
「あっ……あうあうあ……キマシタワー」
ダイヤは幸せの星へ旅立った。
ダイヤはアッツ一行のアドバイザーとして役割を全うしていればそれでよい。
その後、数羽残っていたマッスル
ダイヤは、馬車の中でアームカール(ダンベルを手に持ち肘を曲げ伸ばしすることで上腕の筋肉を鍛えるトレーニング)を行いながら、今後の計画についての話をする。
「寄り道せずに、まっすぐにゃん黒軍団の本拠地に向かい、にゃん黒大魔王を倒すわよ」
「いきなり、大丈夫なのか?」
「むしろいきなり、電撃的に行かないといけないわ。
「分かった。でも、にゃん黒軍団の本拠地って、一体、どこなんだ?」
「テンドン山の北東のチルドシティより、さらに北……アゲモノ大陸の最北端、『アジフライの尾』と呼ばれる土地にある、『
「その城には、直接、行けるものなのですか……?」
「……厳しいわね。道中には、魔境と呼ばれる領域があって、にゃん黒軍団はもちろんのこと、
「そんなにヤバい
「さあ、あたくしも
「じゃあ、その辺のにゃん黒軍団員をとっつかまえて、聞き出せばいいんだな!」
「とっつかまえるって、そう上手くいかないんだぜ。にゃん黒軍団は基本的に一箇所にとどまらないし、向こうから攻めてこないことには、まず見つけるのが難しいんだぜ」
「そうか、一箇所にとどまらないのか……ん? でも……」
「どうしたのよ?」
「なあダイヤ、サックなら知ってるかな」
「何を?」
アッツは、意地の悪そうな笑みを浮かべて、言った。
「四天王ギトニャンの実家の住所」
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