第3章 あなたに恋をしているから
第16話 嵐の前の
放置していた馬車を回収し、テンドン山のふもとの村で軽く買い物をした後、一行は一路、チルドシティへ向かう。
「ええと、剣と、リュックに、お金もあるし、水と食料。砂糖、塩、酢、
久しぶりの草木の生い茂った大地に、胸が弾む。アッツは大胸筋をピクピクさせる。下界の空気が懐かしい。しかし一方でマッスル豆の無駄に強靭な葉も懐かしく感じるのだから、不思議なものだ。
馬車の中、ふもとの村で買った名物のまんじゅうをぱくつきながら、アッツは魔力を練り上げていた。
「アッツ、どうしたんだぜ?」
「ああ、この魔力? ちょっとな、ダイヤさんに会う前に、魔法の研究をしとこうと思ってさ」
「ダイヤさんが、魔法研究者をしておられるからですか?」
「うん。面白い魔法を開発していったら、ダイヤさんのおメガネにかなうかもしれないし」
「素晴らしい心がけですね。私もそうやって、魔法を開発できたらいいんですが……」
プリムの回復魔法は、天婦羅神の加護によるもの。与えられたものであるがゆえに、形を変えたり、新しく創造したりすることは困難なのだ。
「でも、いいことしたら、神様から、ごほうびで魔法がもらえるんだろ? それはそれで、いいと思うけどなあ」
「はい、大変ありがたいことだと思っています。神官として、いっそうの善行を積み、社会の役に立たなければなりませんね」
一行は、まっすぐチルドシティを目指しながらも、可能な限り人助けをする方針を定めた。
「しかし、暇だなあ。
「アッツが四天王を倒したのが効いてると思うんだぜ。あの後ギトニャンはにゃん黒軍団を抜けて実家に帰ったらしいんだぜ。いまでも悪夢にうなされて『アジフライ食えない』という寝言を繰り返す夜があるらしいんだぜ」
「やけに生々しい情報ですね……。」
「『アジフライ食えない』って、なんか『まんじゅうこわい』みたいだな。実家にアジフライ送りつけてやろうか」
「やめてさしあげるんだぜ」
まんじゅうを完食しながら、アッツは極めて残酷なことをのたまった。
特に問題もなく、一行はチルドシティに到着した。
しかし、チルドシティに着いてからが、問題の幕開けであった。
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