第2話 立ち往生

「まいったな……。」


 旅立って半刻、アッツは早くも、外の世界の洗礼を受けていた。

 サクサク街道を進み、最初の目的地、フライタウンが視界に入るところにたどり着くまでは良かったのだ。

 問題は、フライタウンへの入り方が分からないことであった。

 フライタウンは、アジフライの里の外周にあったものよりよほど立派な、柵と門に囲まれている。その門の両脇には、門番が立っていた。街を出入りする者を見張っているのだろう。


「素通りできるのかな。荷物を見せるのかな。それとも、お金を払うのかな……。」


 生まれてこの方アジフライの里から外に出たことのなかったアッツには、外の世界の作法を知らなかったのだ。

 とはいえ、所持品にやましいものはないし、旅に出るにあたって十分な金銭も持ち歩いている。フライタウンに足を踏み入れる際、何を要求されるにしても、問題なく対応はできるはずであった。

 アッツの心配事は、別。


「まさか、サバフライが門番やってるなんてなぁ……。」


 サバフライ一族。アジフライ一族と近縁にある、いわば親戚のような存在。

 両者は里が近いこともあって、一族ぐるみでの付き合いがあるのだが、アッツはサバフライ一族が苦手であった。

 悪いやつらではない。ないのだが、あったかくてほんわかしたアジフライ一族とは違い、サバフライ一族は、クールでどこか理屈っぽいところがある。そんなサバフライ一族を、アッツはどうしても、心の底から好きになることができないのだ。

 街への入り方すら知らない自分が、このまま門番に話しかけて無知をさらせば、サバフライの門番は、自分を馬鹿にするかもしれない。あからさまに馬鹿にせずとも、心の中では、自分をあざ笑うかもしれない。そんな不安から、アッツは、門の様子を遠目に伺ったまま、一歩が踏み出せずにいるのだった。


「どうなさったの?」


 そうして街道の真ん中で右往左往していたアッツの後ろに、一台の馬車が停まった。

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