第2話 家族のために買ったお父さんの話

父は困っていた。娘の事で。

最近、ほとんど話をしてくれない。

原因は解っている。

共通の話題もないし、楽しくないのだろう。


今日は連休の谷間の出勤。

何時も残業で遅くなるが、他に出勤してる人も少ないため定時で退勤できた。


こんな時こそ、娘の好きなシュークリームを買って行こう。

きっと喜ぶだろう。

話してくれなくても、喜ぶ姿を思い浮かべるだけで幸せな気持ちになれた。


今日はあいにくの雨で、いつも持ち歩いている折り畳み傘を取り出す。

そして駅ビルに入っているデパートで、シュークリームを買った。

自然と笑みが浮かぶ。


しかし、彼は痛恨のミスをしてしまう。

乗り換え駅で、シュークリームを忘れてしまったのだ。

何時もと違う時間、ベンチに座ってウトウトした時、

傘を忘れないように気を付けていて、お土産を忘れたのだ。


項垂れて玄関を入る。

「ただいま」


「おかえりなさい」と妻の声

「今日はシュークリームがあるわよ、あの子が買ってきてくれたの」

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