お土産を忘れた事から始まるオムニバス

@sakata-ko

第1話 彼女のために買った彼氏の話

内木ヒロシは自宅玄関前で固まっていた。

正確には、鍵穴にキーを差し込んだ時、ある事を思い出し、どうするか迷っていた。

連休の谷間に出勤した彼は、彼女と一緒に食べようと駅中て売っていた美味しそうなシュークリームをお土産にしたのだ。

何処にも連れて行けなかったお詫びとして。


しかし、途中の乗り換え駅で椅子に座った時、どうやら忘れてしまったらしい。

「取りに戻るか?」


しかし、帰りを待つ彼女の晩御飯の匂いが玄関前までただよっていた。

今日はカレーだ。


これ以上、彼女を待たせる訳には行かない。

ヒロシは踵を返し、近くのコンビニでシュークリームを買い直して玄関のドアを開けた。


「ただいま!」いつもより楽しそうに。

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