「先生、決着って」

「ま、決闘みたいなものだ。互いの体力を飛ばし合って相手の的に到達させた方が勝利……昔よくやった練習がてらの遊びさ」

「…………ぅ」

 先生の手の中でコカナシが目を開ける。

「起きたか……良かった」

「キミア様、アルスは……」

「今から決着をつけてくる」

「それって……」

「そろそろ体力の回復をしないとな。タカ、体力を分けてくれ」

 名残惜しそうにしながらも先生はコカナシを智野に預ける。

「キミア様」

「大丈夫だ。絶対に負けないさ」


 *


「…………」

「……オーケーだ」

 先生の合図を受け錬金石のコネクトを解く。先生に渡した分どっと疲れる。やはりあの錬金術は相当消耗するらしい。

「……そろそろだな」

 頑丈そうなケースから見たことのない汚れた指輪……錬金石のついた物を取り出し、先生はソレを指につけた。


 *


「もう一度だけ聞こう、キミア・プローション。オレと未開錬金術を根絶する気はないか?」

「無い。万に一つも、死んだ方がマシだな」

「そうか、惜しいな」


 二人は一歩近づく。


「ワタシからも聞くぞ、アルス・マグナ。錬金術を辞めろとは言わない、せめてワタシのように錬金術から身を引かないか?」

「有り得ないな。この手から錬金術を手放す時は死ぬ時だ」

「……残念だ」


 二人の錬金石がコネクトされる。


「お互いに相容れず、お互いを許せない。なら……」

「そうだ、残る道は一つ」


「「殺し合うしかない」」


 *


 殺し合い!? そこまでするなんて聞いてないぞ!?

 俺たち三人が声を上げる前にアルスの後ろから声が飛んでくる。

「ちょっとアルス! あたし納得してないんだけどー!」

 いつのまにか来ていたらしいニャルが叫んでいる。

 彼女の方を一瞥したアルスは小さく息を吐いて先生の方を見る。

「キミア様! ダメです、そんな……」

 コカナシの言葉に先生の顔が和らぐ、しかしソレは一瞬の事で元の険しい顔に戻る。


 二人はそれぞれ心配する者に同じ言葉を発した。

「「何があっても、手を出すな」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る