②
「……久しぶりだな」
そうソレに語りかけられた時、二人はソレが誰か認識出来なかった。
顔に表情は無く、ロボットのように無駄のない動き。それら全ては錬金術によって編まれており、元の身体は殆ど変換されている。
しかし中身は変わっていない。その中身を感じ取ったコカナシだけが彼に気づき、キミアの後ろに隠れる。
コカナシの手を掴み、エルフの目を使ったキミアがソレを理解する。
「アルスか」
「……ああ、見た目が変わっていたのだったな」
「なんだ、それは」
「視たなら分かるだろう、ホムンクルスの劣化応用だよ。生命体は作れないがそのガワは作れる。故に……」
アルスは一足早く動いたゲンと目を合わせる。
「流石にバレたが……こっちのが早い!」
ゲンが毒薬をかける、アルスは避けるそぶりを見せずにそのまま受け入れる。
「この身体に毒は効かない」
「なっ……そんな事をしたら」
一定の物ではなく全て毒を効かなくする、それは全ての薬を無効化するに等しい。
しかし錬金術で身体を作り替えれるアルスにとってそれはデメリットにならない。
「エルフの血、特異なる少女。今度こそ置いていって貰うぞ」
「渡すわけないだろ!」
キミアはいつか来る運命であるこの日の為に準備をしていた。アルスが毒薬対策をしてくるのは想定内。
故にキミアが用意したのは物理的な攻撃。
投げたのは数本のナイフ。しかしその周辺には見えにくく加工した小さい棘が纏わりついている。
「ナイフ如きでこの身体に傷はつかない……が」
アルスはコネクトされた錬金石を生命力で動かしてナイフを防ぐ。
「お前、そんな芸当まで……」
「塗ってあるのはあの時の分解薬、しかも劣化版か。この身体を壊すにはうってつけだが、それくらい此方も想定済みだ」
キミアとゲンがありとあらゆる手を使うが、全てが一層される。
「やはりお前ではその二つの素材を使いこなせない」
キミアに落胆したアルスは詰めに入る。
「逃げるぞ!」
一番早く反応したのはゲンであった。その声を聞いてキミアとコカナシは走り出す。
アルスは錬金を遠距離武器に切り替え、キミアに向かって射出する。
『間に合わない』
走りながら痛みを覚悟するがソレは一向に訪れない。
状況確認の為に振り返ったキミアは思わず立ち止まる。
「師匠、なんで!」
キミアに射出された筈の物はゲンの左足に突き刺さっている。
ゲンはさっきの位置から一歩も後退していなかった。最初から彼は……
「ここは任せて逃げろ!」
アルスの攻撃を受けたり防いだりしながらゲンは叫んだ。
「でも、それじゃ……」
「いけ!」
ここから状況は覆らない。そんな現実を最初に飲み込んだのはコカナシであった。
声には出さずに、彼女はキミアを引っ張る。
「やめろコカナシ、加勢する!」
キミアから何を言われようとコカナシは退かない。
親しい人が死ぬ辛さを一番理解している彼女であったが、何をしてでも誰かを助けたいと一番願ったのも彼女であった。
それが出来ずに一人生き残った彼女だからこそ、ゲンの覚悟を無下には出来なかった。
「っ……」
コカナシの頬を伝うモノを見て、キミアはようやくゲンに背中を向ける。
「素晴らしい師弟愛だが、逃すとおもうか?」
アルスがキメラを放つ。すれ違う直前にゲンはそれに触れ、コネクトする。
「あいつらの元には行かせない!」
自身の生命力をキメラに送り、錬金術で生命力の縄を作る事でキメラを止める。
「素晴らしい芸当だ。生命力を通した神経が焼き切れる事を除けばだが!」
アルスの一撃が、ゲンに致命傷を負わせた。
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