錬金薬学のはじめ『とある錬金薬学師の終幕』

 ツェット数年の暮らしは割愛される。それらはキミアとアルスの物語に必要のない、日常だったからだ。

 キミアは様々な学部が一度に学べる国の中でも最大の学校に通った。生徒会長たるキリーとの追いかけっこなど刺激的ではあったが平穏な日々であった。

 ゲンは健康志向を謳う料理店でバイトをしていた。学ぶものも多く忙しくはあったがコレも平穏な日常であった。

 コカナシは数年の間に少しばかり大きくなり、キミアの学校にいたミモザという者と仲良くなった影響で薬学の知識もつけていた。ちょっとしたトラブルはあったが彼女にとってはそれも平穏な日であった。

 しかし、まだ彼女の声を聞いた者はいない。



 キミアは無事資格を取り、目的は果たされた。

 仲の良い者を招き、オムライスなど皆の好物が並べられたお別れパーティーを行い、三人はまた旅立つ事となる。



 その後の数年もまた割愛される。これもまた平穏であった。割愛が続くばかりだが、彼ら三人の幸せな日々が長い事に越した事はない。


 物語が再開するのは旅の再開から更に数年。とある村と村の間、何もない平原を旅していた時である。

 言うまでもないがその日、平穏は崩壊する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る