②
「ちょ、智野!? なんでここに」
「それはこっちの台詞! ……でも、思ったより平和ね」
このまま詰めよられるかと身構えたが智野の視線はニャルに移る。
「ねえニャルちゃん、時間あるかな?」
「んー? どーしたのー?」
「少しお話がしたいの」
「いいよ! じゃあカフェいこうカフェ! あそこのケーキは甘くて素敵なの!」
「え、あ、でも……」
戸惑いながらも智野はニャルに連れて行かれた。
残ったのは俺とアルスの二人。
「どうやらニャルに用があったのは少女の方らしい」
「はい、では俺はこれで……」
「出した茶を残していくのか?」
「…………」
アルスは目で椅子に座れと促してくる。
「まあ座れ。研究も一段落ついた、ニャルが帰ってくるまで話をしようじゃないか」
*
緩くなった紅茶を啜り、喉を潤す。
「何か話があるのか?」
「この前の錬金術、あれは何だ」
「どれの事だよ」
「トリストメギスの話だ。ワタシが介入する直前、錬金術の気配がした。アレはお前だろう」
「……ああ」
身体強化の事だ。結局は不発に終わったがバレていたらしい。
身体強化の事を話すとアルスは小さく「面白い」と呟いて懐から手帳を取り出した。
「それについてお前の師……そう、シャーリーから何か言われたか」
そういえばアルスにはシャーリーさんが先生だと誤魔化していた。
手帳を見ながらなのでシャーリーさんの名前は覚えてないらしい。
「詳しくは何も。ただ使いすぎるな、と」
「そうか、ならば少し授業をしてやろう」
アルスが指した先には籠に入れられたネズミがいた。実験用だろう。
「視界を変えろ」
言われた通りに視界を変える。ネズミの生命力などに異常は見られない。
「あのネズミとワタシはコネクトしている」
アルスの指輪が光り、体力が漏れ出す。それはコネクトを伝ってネズミの方へ近づいていく。
体力がネズミの中に入り、しばらくすると異変が起きた。
ネズミの生命力が唐突に乱れ始めたのだ。ネズミは暴れ回り、数分で絶命した。
「……今のように体力、生命力は劇物だ。それを身体に入れようものなら傷つくのは当然の事だ」
言いたいことはわかる、だが……
「今のは拒絶反応に近くないか? 俺は自身の体力を自身に込めただけだ」
「胃液が逆流すれば喉が荒れるだろう。劇物は適切な位置になければ毒だ」
「……なるほど」
どちらにせよアレはもう使えない。
「…………」
「…………」
「次はお前の番だと考えたが、無いならばもう一つ。あの少女の足はなんだ?」
「答えたくはないな」
「構わんが、ワタシの興味は消えない」
言わないならば実際に見て確かめると言ったところだろう。
「わかった、話す」
どうやら、会話はまだ続きそうである。
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