「……へ?」

 部屋に入った直後、大きな地鳴りと共に奥にある巨大な像が地面に激突していた。

 壊したのは恐らくニャル。ゲラシノスは笑顔を固めたまま口を開く

「……なに、を、神が……神の御姿が!」

「あんなのがあるからダメなの、だから壊した! もうおしまい、帰る!」

 ゲラシノスに背を向けたニャルが俺たちを視認する。

「おーい! 帰ろー!」

「待ちなさい」

 此方へ来ようとするニャルの襟首をゲラシノスが掴む。

 最早その顔に笑顔は無く、怒りが表層に現れていた。

「神の子だと思っていましたが……いやはや、なるほど、そうですか、そうだったのですね!」

 乱雑に投げられたニャルの額に銃口が突きつけられた。

「貴女、邪神の子だったのですね」


 *


「やめろ!」

 叫んで飛び出そうとしたが、俺たちにも銃口が向いていた。

 四方八方から銃を向けられ、囲まれている。

 智野は盾を開いている。ならば策はある。

 長女の時と同じ、超スピードでニャルを突き飛ばす。

『錬金……開始』

 心の中で呟き、身体の中の錬金石に体力を込める。

 それを身体の隅々まで流し込み、強化を……

「……っ!?」

 声が出そうになるのをなんとか堪える。

 神経と血管の中を無数の針が突き刺したような鋭い痛みが全身に駆け巡った。

 こう集中を削がれては錬金なんて出来やしない。

 ああ、先生が使い過ぎるなと言っていたのはこういうことか。

 動くことすらままならず、俺はただ見ていることしかできなかった。


「次こそは、神の子に生まれてくださいね」

「ニャル!」


 数秒の間の後。大きく風穴が開き、中から赤い液体が噴き出した。

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