「智野、下がってろ」

「おやおやおやー? 遠距離武器相手に距離を取る? ネタバレしちゃってる系?」

 四女は「んー」と暫く考えた後、「にゃるほどねー」と目を鋭くさせる。

「マッカの家族ちゃんか」


『彼女が一歩踏み出せば、既に懐にいます。そこに距離など関係ありませんよ』

 そう教えてくれたのはカリだった。

 だから俺はあらかじめグローブを強化していた。

 近接型リトルガンマン。彼女はその名に相応しく、銃を飛び道具として見ていない。

 確実にあたる懐、ゼロ距離でソレを放つのである。


 *


「硬いグローブだね、それも錬金術ってやつなのかな?」

 数回の攻防の後、四女はまた距離を取った。

 一丁を後ろの智野の方に向けたままもう一丁に弾を込める。

「それもって事はその銃もそうなのか?」

「あたし扱いが乱暴だからさ、ゲラっちに錬金してもらったんだ。オーバーヒートもしないし頑丈で素敵なの」

「リロード完了」と歌うように言った四女はまたも懐に来る。



 この廊下は一直線。だから来る場所は決まっている。

「……あらら、掴み取り?」

 弾を防ぐ事数回。グローブが悲鳴を上げる直前でそれは成功した。両方の銃を掴んだのだ。

 しかし四女は余裕の笑み。

「でもでも~、あたしってば力もあるのよん」

 勢いよく振り払われ、よろけた身体に銃口が付けられる。

「……あれ?」

 しかしトリガーは引かれない。いや、引けないのだ。

「錬金術でテキトーに分解した、それはもう使えない」

「ありゃりゃ、ダメじゃんゲラっち」

 銃を放り投げた四女は俺たちが入ってきた方に向かう。

「何処にいく」

「撤退。銃が使えないとかありえないし……それとも」

 四女はポケットから小さいナイフを取り出す。

「止める?」

「……いや、いい」

「じゃあね☆」

 去っていく四女を確認し、智野と共に進む。

「この先に……ニャルとゲラシノスがいるんだな……」

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