「ゲラシノスが向かったのは神の小部屋。確か神の像が置かれている所でしたかね」

 カリ達と合流し、皆で地図と睨めっこする。

「ところでミス・ケテリはどうしたんだい?」

「帰った。キメラの補給が限界だとかなんとか。錬金した後のように突然疲れた感じだった」

「ああ、キメラの原動力はコネクトした人に依存するからね。キメラを戦わせたんなら常に錬金してると同じだよ」

「ミス・マッカは博識だねぇ。機械なんかも上手く操ってしたじゃないか」

「そりゃあマッカ姐は様々な資格を持っていますから、それがあるからこそマッカファミリーはどんな事でも……」

「あ、あの! 話が……逸れていってませんか?」

 智野の一言で会話は切り替わる。

「この部屋の出入り口は一つ。排気口も何も、抜け道はありません」

「……強行突破」

「なら下手にチームを分けるより全員で突撃の方がいいだろうね。陣形はどうする?」

「その前に、僕としてはこの広間が気になるんだけど」

 アデルが指したのは目的の部屋の前。他のとは違い異様に大きい場所がある。

「カリ、ここはなんだい?」

「何もありませんよ。不可解だったので前に調べましたが仕掛けの一つもありませんでした」

「一応用心して行こうか。アデル、あんた調子は」

「前衛は無理そうだ。後衛からサポートは余裕だけれどね」

「ならばアデルを挟む形でワタクシ達が前、タカヤさんとトモノさんが後衛でどうでしょう」

「STSを想定してかい?」

「ええ、まだ顔を見せていないSTSは三人。ゲラシノスの事なので一人は側に、残り二人を此処に配置してると考えました」

「なら二人の方は次女と末女だろうね」

「あの二人は初見殺しです、対処出来るワタクシ達が適任でしょう」

 マッカさんは少し考えた後に俺たちの方を向く。

「予想通りだったら二人は先にいきな。末女相手じゃ足手まといだよ」

「僕はどうしようか?」

「あんたはどういうわけか戦闘慣れしてる。こっちをサポートしてもらうよ」

「おうともさ、このアデルに任せておくといい!」

 いつもの謎ポーズのアデルを皆無視して扉の前に立つ。

「突入だよ!」


 *


「おねえちゃん、来たよ」

「サンザン、マタサレマシタネー!」

 突入と同時に二つの人影を見たマッカさんは叫ぶ。

「次女と末女だよ!」

 合図はそれで充分だ。車椅子のエンジン音と共に俺たちが先に進む。

 何かしら攻撃が来たようだが、マッカファミリーが何とかしてくれている。

 部屋は広かったが入口は小さい。扉の前で一時停止。

 装備品に体力を込め、硬くする。

「今からやって体力大丈夫なの?」

「カリから事前にやっとくよう言われた。多分残りのSTS対策だと思う」

 智野を後ろに下げ、扉を開く。

 一本の地味に広い通路、そして先の方にまた扉。あの先が神の小部屋とかいうところだろう。

「ハロー、そしてさようなら」

 懐から声が聞こえる。

 通路に一歩踏み入れた、ただそれだけの時間で彼女はそこにいた。手には二丁の拳銃。

「やっべ!」

 発砲されるがあらかじめ錬金していたおかげでグローブでなんとか防ぐ。

「おやおやおやー? 生きてる? じゃあ自己紹介しちゃう!」

 またも見えないほどの速さで通路の奥へと引いた少女がウインクする。

「銃への冒涜こそあたしの美徳。STS四女、近接型リトルガンマンってのはあたしの事よ!」

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