⑫
三女が繰り出す盾を切って尚衰えない威力。機械の腕も相まって防げるものでは無いだろう。
そんな斬撃に対してアデルは防戦一方。ストックボックスから小さい盾、コンパクトガードナーMを多重展開して起動を逸らすので精一杯だった。
「それが防御策トしては最善なの。でも……」
「それだけじゃ攻略したとは言えない。そういいたいんだろう!」
逸らし損ねた切っ先が掠め、アデルのコートが切りさかれる。
その内側には大量のストックボックス。
「開け、開け開け開けぇ!」
ストックボックスから大量の道具が飛び出す。その大半はアデルが持ち歩いている生活雑貨だが、散りばめたように毒や武器などが混じっている。
俺が喰らえば一溜まりもないだろう猛攻、しかし三女は機械の側を盾にして突破を測った。
「終わりじゃないさ!」
ポケットに残った最後のストックボックスから出たのはハンドガン。引き金が引かれ、玉が射出される。
「そんなモノ、この身体ナラ弾くの」
「狙うべくは別さ」
弾丸は三女の身体から逸れ、刀へと当たる。いくら精巧な刀といえど側面では切れない。弾の衝撃に耐え切れず三女の手から離れる。でも……
「避けろアデル!」
「へ?」
三女の逆の手には槍が握られている。アデルからは死角だったのだ。
叫びはしたが間に合わない。アデルの猛攻を突破した三女の槍がアデルの右足に刺さる。
「んぐっ……し、かし! 捕まえたぞ!」
アデルは苦痛に顔を歪めながらも槍の根元を握って離さない。
「負け惜しみハやめておくといいの。貴方の手元には武器ガ無い、でもワタシにはこの手ガある」
三女が機械腕を振りあげた瞬間、アデルの表情に僅かな笑みが入りこむ。
叫ぶように、フロア全体に響き渡る程の大声を上げる。
「出でよ!我が身を貫く必中の槍よ!」
その声に反応したのは誰でもなく一つの箱。中から飛び出した槍、グングニルを再現したソレは台詞が終わる前にアデルの心臓目掛けて一直線に飛んでいた。
しかし、ソレがアデルに当たる事は無かった。なぜなら……
「ワタシヲ……盾に……」
「一緒に貫かれようと思ったんだけどね、君の機械部分だけで止まってくれたようだ」
「機械半身機能停止……戦闘続行不可能……離脱」
そう呟いたかと思うと三女の硬いスカートから火が飛び出し、ロケットのようにしてどこかへと逃げて行ってしまった。
少しすると閉じ込めていた壁が消え、俺たちは自由の身となった。
「アデル! いま治療する!」
ポシェットから取り出した薬をアデルは手で制する。
「痛み止めは貰っておこう、しかし錬金するのはやめたまえ」
「でもその怪我」
「君の目的は此処じゃないだろう? 体力は取っておくんだ」
「いや……」
アデルは痛み止めを飲み、槍が刺さっていた場所を自分で止血する。
「僕はカリにでも拾ってもらう。タカ、君は先に行くんだ。トモノ嬢に何かあってはキミアとコカナシちゃんに怒られてしまう、その方が怖い、身の毛がよだつね」
その真っ直ぐな目を見て俺も決心する。
「わかった。安静にしてろよ」
「おうともさ、親友」
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