「生命力が見える、それって……」

 智野の視線は俺に向けられている。それは、俺のと同じ……いや、異界の才能ではないだろうから先生と同じ

「エルフの目、ですか?」

「ええ、だけどわたくしはエルフではないのです。目を移植したのです、視力回復には至らなかったのですが生命力は見えるのです」

「目の移植? ここの医療ってそこまで進んでるのか?」

「実例はあるはずだよ、国の認可は出てないけどね」

 答えたアデルは顎を撫でて続ける

「でも……エルフの目? それはおかしい」

 純血のエルフは既に絶滅している、しかし……

「先生と同じでハーフエルフの類いだろ? エルフから三親等はハーフエルフだから結構いるって聞いたぞ」

「エルフの目は二親等まで、しかも稀だって言ってたよ」

「いやいや、そこじゃないんだ」

 始まりそうになった智野との考察をアデルが制してきた。

「そもそも別種族の移植はまだ成功例が無いって聞いたんだよ」

 テケリ視線が集まる。答えは彼女のみが知るのだ。

「だってコレは医療ではありませんもの、これは錬金術の賜物なのです」

「移植の錬金術……」

 もしそれが本当ならば……智野の足を治すのに利用できるかもしれない。

「その話、詳しく聞きたいです。その錬金術を行なったのは誰ですか?」

「ココに住む錬金術です。でも何かに利用するというのならオススメはしません」

「何か副作用が?」

「ええ、視力を失います。わたくしは元々視力を失っていたので……裏技みたいなやり方です」

「なるほど……」

 それは、ダメだな。

「話を交わすのはとても良いけど、本来の目的を忘れてないかい」

「あ、そうだ。ニャルだニャル」

「数時間前まではいたのですが……すみません、何処にいるかはわからないのです」

「何処に行くとか言ってなかったですか?」

「さあ……あの子は神出鬼没ですから。狙って会うのは大変ですよ。ゲラシノスがやっているように人海戦術が一番でしょう」


 *


「情報は手に入ったかい?」

「いや、人海戦術が有効って事ぐらい」

 通路を進みながらカリが溜息をつく

「やっぱり別れて探しますか?」

「そうだねぇ、二人ずつがよさそうだねぇ」

「何を探しているんじゃ?」

「何って、そりゃあニャル……」

 ちょっとまて、誰だ今の。

 後ろを見ながら一歩離れる。たぶんゲラシノスではないが……

「カッカッカッ、そう警戒するな青年」

 そこにいたのは一人の男性。白髪の髪はサイドにしか残っておらず見えた歯は何本か抜けている。

 スマートな白衣風の服を身にまとい、目にはゴーグルのように分厚い眼鏡が光っている。

「いつもは研究室にこもってる癖に、間の悪い男だね」

「マッカファミリーまで一緒か、まあニャルを探すなら適任じゃわな」

 男はケタケタと笑ってズレた眼鏡をかけなおす。

「錬金術師もおるようじゃし自己紹介をしておこうか。儂はビルケ、宗教面は知らんが技術面を取り締まっておる……トリストメギスのNo.2じゃ」

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