「さてさて、お待たせしました」

 昼寝から起きたナディと遊ぶこと数十分。カリとモウが出てきて扉を閉める。

「あれ、二人だけ?」

「ええ、技術面での交渉は終わりましたから。後はマッカ姐にお任せです、ワタクシ達は先に説明を」

「説明、ですか?」

「はい、ニャルを助けるのであれば少なくともゲラシノスとの対立は避けられません。と、言う事でワタクシ達特性の自衛器具をご購入頂きまして」

 モウが取り出した何かを持ってカリは智野に近づく。

「その車椅子で機動力のあるアナタには動きを阻害しないコレを」

 長方形の箱に取っ手がついたもの。確かコレは……

「コンパクト・インパクト・ガードナーβ! 前回のものは錬金術を通しやすいモノでしたが今回は違います」

「……β?」

「ええ、完璧ではありません。ですが実用性はありますよ」

 開かれた盾は広いがとても薄い。ホントにこんなので防げるのか?

「この盾には衝撃吸収装置が組み込まれています。使用エネルギーは体力、持ち手に錬金石を取り付けてあるので錬金術と同じ要領で流し込めば……」

「……何か変わったようには見えないですけど」

 強いて言えば持ち手にある充電マークみたいなランプが全て光ったくらいだろうか。

「まあ、見た目は変わりませんね。これは実際に使うのが一番わかりやすいでしょう。モウ、こちらは頼みますよ」


 頷いたモウから智野が細かい使い方を聞いている間、カリが大きなポシェットから何かを取り出した。

「アナタにはコレを」

 渡されたのは手袋と肘当てに膝当て……更に帽子に靴……

「……ローラスケートでもするのか?」

「まあ、身体の保護という点では同じですね。アナタには店主さんから伝言が」

「先生から?」

「ええ『自分を錬金するなどという戦い方はやめろ』と」

「う……」

 バレていた……

「と、いうわけでこの防具の裏地には、錬金石が仕込まれています。身体への錬金のように身体能力は上がりませんが防御面だけならこちらで良いかと。使い方は……わかりますね?」

「ああ」

 手袋と指輪の錬金石をコネクトし、体力を通す。微かに手袋が光り、強度が増す。瓦割りとか出来そうだ。

 強度が増すほど少しずつ重くなる、多用は避けた方が良さそうだ。


 しばらく使い慣らしていると先生達が出てきた。

 先生は俺たちを見渡し、珍しく言いにくそうに口を開く。

「すまんが……ワタシとコカナシはニャルを助けに行く事が出来ない」

「……え!?」


 *


「……そういえばニャルが言ってた」

 頭を抱える。そうだ、トリトスにはアイツがいた……

「アルスですか。詮索はしませんが……まあ、ワタクシから見ても特異な錬金術師ですよねぇ」

 溜息をついたカリを後ろに下げ、マッカさんが前に来る。

「そう落ち込むんじゃないよ。二人減ったけど三人増えるんだからね」

「それって、まさか」

「ああ、今回のニャル脱出……マッカファミリーがお供するよ!」

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