「よくぞ来た。キミア、コカナシ、隆也……」

 ボル様が記憶を探り出したのを見て俺は口を開く。

「智野です」

「ともの、智野……おお! ならば成功したのか!」

「はい、今回はその報告に。あともう一つ」

 先生は智野の背中を軽く押す。

「こいつの才能を見てください」

「なるほど、では早速始めよう」


 *


「ま、今回も予想通りじゃな。智野の才能は常人では考えられない体力効率、扱いは難しいが馴れれば大きな力となるだろう……どうした?」

 智野はボル様を見て固まっている。

「……こが」

「どうした?」

「猫が喋った!」

「そういえばそうだった!」

 俺は完全に慣れていたけど智野は初めてだった!

「そういえばなんで話せるんですか?」

「この世界に来るときに儂とケイタの一部は混ざり合った。お前達のようなコネクトだけでなく言語機能なども、な。

「ってことはケイタ様は猫の言葉が?」

 ボル様が頷いた時に気づく。そういえばケイタ様がいない。

「その、当人は?」

「ケイタはネッコワークと会議をして……帰ってきたようだな」

「あ、キミア、久しぶり」

 一通り挨拶をしたケイタ様はボル様の代わりに椅子に座る。ボル様はその膝の上に乗る。

「やっぱり現地を見ないとわからないかも」

「そうか、まあその話は後にしよう」

「何か問題でも?」

 先生が聞くとケイタ様が頷いて口を開く。

「猫島のネコの様子がおかしいって、調査しに行きたいけどボルが許してくれない」

「最近は物騒だからだ。一人で行かせられない」

「物騒?」

 神様なのに? いや、神様じゃなくて魂に近いのか。

「ああ、そうだな。キミア達も一応気をつけた方がいいな……トリスメギストスという団体が厄介でな」

「あの宗教団体ですか?」

「知っておったか。錬金術の才ある人を見つけては引き込んでいる。ただの勧誘なら問題ないのだが子供を攫っているという情報も出ている」

「そんなことが……」

「ボル、それより猫島はどうするの?」

 ケイタ様がボル様の髭を引っ張る。珍しく猫の鳴き声をあげてその手に猫パンチを繰り出す。

 少しの間考えこんだボル様は俺たちに目を向ける。

「あ、いるじゃないか護衛」

「ワタシたち……ですか」

 先生は露骨に嫌な顔をしたがボル様は意に返さない。

「頼めるか?」

「……報酬はありますよね」

 ボル様の手招きで先生が前に行く。何やら数回言葉を交わした後、先生は戻って来て笑顔を作る。

「喜んでやらせて貰います」

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