②
「……これだけですか?」
渡された調合薬のリストと先生を見比べる。
マンドレイク風邪で儲かったとはいえ、この仕事量は少ない気がする。
「お前はトモノの指導があるだろう?」
「あ、それで少なくして……?」
いや、おかしい。
「指導するのは先生では?」
「はぁ? そこまで面倒は見んぞ」
「え……」
「指導はいい経験になる。任せたからな」
そんなこんなで智野の指導は俺がする事となった。
方法は俺のものと同じ、とりあえず座学を始める事にした。
*
「……あづい」
夏は始まったばかりだというのにとても暑い。俺と智野は錬金の準備をしながらダレていた。
「これは無いといけないの?」
智野が羽織っている錬金衣装を摘む。
「まあ、錬金溶液が付くと普通の服は溶けるからな」
そんなことで服をダメにしたらコカナシになんと言われるか……考えたくもない。智野もそれは同じようで、それ以降は文句を言わなくなった。
「じゃあいつものように簡単な傷薬を錬金して見て」
「わかった」
約二ヵ月で智野は座学をほぼ習得した。シャーリィさんから教わっている方はもう少しかかりそうだが、錬金の練習をする上では問題ない。
「じゃあ、始めるね」
錬金溶液の入ったビーカーに数種類の薬草を入れ、混ぜ棒で混ぜる。
錬金溶液が溶解性質を持ち、薬草を溶かして混ぜ合わせていく。
しかしこれだと薬としては不十分だ。時間が経てば分離してしまう。
「じゃあ、次は」
蓋をしたビーカーに智野は手を乗せる。その手にある錬金石付きの指輪と液体が淡く光る。
智野が体力を込めると液体は渦巻き、中から光が漏れていく。薬草が合成されると共に液体は徐々に減っていく……筈なのだが。
「智野! ストップ!」
叫びながら智野を机から離す。指輪の光は消えたが液体は光ながら渦を強めていく。
「遅かったか!」
あらかじめ置いてあったプラスチックの箱をビーカーに被せる。少ししてから箱越しに振動を感じた。
「……また、ダメだった?」
頷いてから箱を持ち上げる。出てきたのは割れたビーカーと中途半端に混ざり合った薬。
「何が悪いんだろうなぁ……」
錬金方法は問題ない。この感じだと体力の入れすぎだと思うのだが、時間的に体力はまだ足りない段階なのだ。
「仕方ない、先生に聞くか」
最初からそうすればよかったのだが、なんだかへんなプライドがあって聞けなかったである。
*
「はあ? 体力が足りない時間なのに体力が飽和してる? わけわからん」
「いや、俺もわからないんですよ」
「……トモノ、とりあえず見せてみろ」
無造作に渡された錬金溶液を使って智野は錬金を開始した。
「体力の質……か?」
先生にしては歯切れが悪いがそれは置いといて
「体力に質とかあるんですか?」
「まあ、あるにはある。ただワタシのようにエルフの血が入ってるとかでなければ錬金に影響が出る程のものではない」
「じゃあわたしにエルフの血が……ないよね?」
いや、俺に聞かれても……ないだろうけどさ。
「だとすればお前の目と同じかもしれないな」
先生の視線は俺に向いている。
「……目?」
「お前……忘れていたのか」
「……?」
目……メ……め……?
「あ、あれか」
この世界に来るときに得たらしい錬金術の才能。
確か命名されたのは「妖精的鑑定眼」
先生の目のように体力や生命力を見る事が出来るんだっけか。
目が痛くなる事もあり、使わないから完全に忘れてた。
「つまり智野にも何かしらの才能があるって事ですね」
先生は頷いて立ち上がる
「詳細はわからないがな。とりあえずボル様とケイタ様に聞きに行くとするか」
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