マンドレイク大収穫祭は巨大マンドレイクの宣伝効果もあり、去年より相当多い参加者が集まった。

 心なしかマンドレイクも活きがよい気が……

「いや! 心なしじゃねぇ!」

 あれだ。巨大マンドレイクの近くにいた奴らだ!

 流石に疲れて休憩スペースに戻る。コカナシは未だマンドレイク狩りを続けている。なんて体力だ。

「大丈夫?」

 座って休んでいると智野がスポーツドリンクを渡してくれた。

「店はいいのか?」

 大収穫祭に参加するわけにはいかない智野はアデルに頼まれて売店の売り子をしている。

「今は休憩交代なの」

 そう言った智野が持っているポーチに付いているマンドレイク守が目に入る。

「…………」

「タカ?」

 やはりハッキリさせておかなければいけない。有耶無耶にすると大抵はロクなことにならないのだ。

「智野、あのマンドレイク守だけど……」

「恋なすび御守り! ……結構人気だよ。カップルとかにも好評だって!」

「……ん?」

 カップル? ……まさか

「離縁……とか?」

「え? なんで?」

 なんか凄い睨まれた。

「いや、ほら。これって新しい縁を結ぶ御守りだって」

「ううん、それだけじゃないの。新しい縁を結ぶだけだったら結ばれた後に捨てられちゃう」

「じゃあ意味合いが変わるって事か?」

 そんな効能の変わる、都合が良くて無茶な御守りが売れるのか?

「御守り、今持ってる?」

「ん、ああ。一応」

 貰ったからには身につけないまでも持ってないというのは悪いと思って鞄の隅に入れて置いたのだ。

「これね、男子用と女子用があるの」

 智野が取り出したそれは目の部分の色が違った。俺のは青で智野のは赤だ。

「色が何かあるのか?」

「色は分かりやすくしただけ。ほら、左右対称でしょ?」

 確かに俺のやつは先が左に曲がっているが、智野のは逆だ。

「で、こうするの」

 智野が自身の御守りと俺のソレをくっつける。

「こういう事」

 左右対称の勾玉のような形。それが組み合わされて作られたのは……ハート形である。

「あ……そういうこと」

 つまり智野が俺にコレを渡したのは……

「……っ」

 気づいた瞬間顔が熱くなる。

 冷静に考えてみれば発想が飛躍しすぎていた。アデルが笑っていたのも納得だ。

 凄まじい思い込みを自覚してしまった。誰にも会いたくない。穴に籠りたい!

 しかしそういう訳にもいかないので俺は立ち上がり、マンドレイク狩りを再開したのだった……

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