⑧
俺の身体を切りつけているのはかまいたちなどという怪奇現象などではない。
キメラの背中についている箱から出ている風が違う箱から出ている鋭い何かを飛ばしているのだ。その箱には見覚えがある。ストックボックスだ。
大きな木の後ろに隠れながら俺は考える。キメラに近づくのは危険だ、風を出している箱が変わる瞬間をつけば何かを投げるくらいの余裕はあるが……残念ながら武器になりそうなものは持っていない。
倒せないとなれば逃げるしかない。このキメラが人払いだとすれば逃げることで解決するだろう。しかし背を向けても襲ってきたなら俺はここで息絶えることになりそうだ。
「それはごめんだな」
こうして思考を張り巡らせ独り言をつぶやいている間にも盾になりそうな物は少なくなってきている。
かまいたちもどきを起こす犬と出会った時の対処法なんて聞いたことがねぇよ!
「……ん?」
心の中で叫んだソレに引っ掛かりを覚えた。
犬……そう、あれの元は犬なのだ。
もしあのキメラが犬の特性をある程度引き継いでいるのなら嗅覚が鋭いはずだ。
このキメラが人払いならば嗅覚が鋭い方が何かと有利ではあるだろう。希望的観測に過ぎないが……俺はその推測を信じてみることにした。
俺はシャーリィさんからもらったミズナギドリ用のカプセルを両手に持つ。
箱が入れ替わるタイミングを見て……俺は木の後ろから出てカプセルを投げつける。
二つ投げたカプセルのうち一つはキメラの身体に、もう一つは顔に命中した。
一瞬ひるんだキメラは俺の方を見て低く唸った後、攻撃を再開しようとした瞬間カプセルの匂いの気づいたようだ。
「よっしゃ!」
キメラは犬らしい鳴き声を上げてカプセルを取り払う……が、匂いが取れることはない。
苦手な柑橘系の匂いに困惑する犬キメラを背に走り出す。
逃げるのでは無い。俺はキメラが阻んでいた先、光の発生源へと向かった
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