⑦
シャーリィさんが光を見たという森の近くまで来た。
アルカロイドの外、北半分くらいにわたる森。よく採取に訪れる森であり街の人たちはそのまま『北外れの森』と呼んでいる。
奥に行くほど森らしくなっていき、獣の生息域に入ることになる。この前のセルロースさんの土地は生息域にギリギリ被るくらいの位置にあった。
ちなみに俺がこの世界に来た時落ちたのもここである。
「……来たか」
先ほど開いていたカプセルの匂いにひかれてミズナギドリが筒を背負って飛んで来る。
「ありがとう」
受け取った筒の中から手紙を取り出す。まだ成果は上がっていないようだ。
「さて、どうするか」
獣の生息域に被らない程度に進んでもいいが……生息域から外れた獣に出くわしたら厄介だな。
明るい時ならばある程度隠れたりするコツを覚えてきているから何とかなるが、夜になるとわからない。
ここでシャーリィさんの報告を待つか。そんな考えを紙に書き、筒をトリに預ける。
「頼むな」
カプセルを閉めて少しするとミズナギドリは元の方角へ飛んで行った。
少しの間ここで待機……そんなことを考えていた時にソレは起こった。
森の奥の方から幾つかの光の粒が出てきた。光の粒は俺のところに届くことなく消えていったが、ソレは錬金術のモノに似ていた。
光の発生源は見えない。しかしここまで光の粒がくるのだから強い光なのだろる。恐らくシャーリィさんが見たのもこれだ。
光の粒を辿れば発生源にはたどり着ける。
「……行くか」
俺はハーブティーを少し飲んだあと森に入って行った。
*
四方に拡散する光の粒がわずかに固まっている場所をみつけながら俺は森の中を歩いていく。
光の粒は俺や先生が錬金時に出すよりも相当明るく、真っ暗なはずの辺りを薄暗く照らしている。
もう少しで発生源に着くかというところで突然辺りに風が吹き荒れた。
「……え?」
左袖が破れている。なんとかその現実を把握したころには右腹部が裂けていた、今度は服だけじゃなく少し肌に届いている。
周りの木々が裂け、草木に擬態していた風の主が目に映る。
ベースは犬か狼。体には植物が生えその下の肉体には箱のような物が無数に埋め込まれている。
その姿は以前見たモノに似ている。そう、あいつは……
「またか……キメラ!」
叫ぶと同時に風を防いでいた腕にいくつもの切り傷が付き、流れた血が風に乗って飛んで行った。
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