第7話

 ……どうしてこんなことになったんだろう。

 シャンプーを手のひらに出しながら、チラッと隣を見る。

 あたしのすぐ横で、リサちゃんがシャワーを浴びてる。


 今、あたしたちがいるのは寮の大浴場。

 夜じゃないから、浴槽にはお湯は入っていないけど、シャワーだけならいつでも使えるんだ。

 大浴場の壁際にあるシャワーを並んで使ってるんだけど、個室じゃないし、仕切り板みたいなものもない。

 だから、すぐ側にリサちゃんを感じる。

 他の人とこうやってシャワーを浴びることはあるけれど、こんなにドキドキしたっけ?


「……どうしたんですか? 夢乃さん」

「あ、ううん。何でもない」


 ヘンな気持ちが吹き飛ぶように、ガシガシと髪の毛を洗う。

 ……ホントに、なんでこんなことになったんだろう。



「あ、リサちゃん。帰ってたんだ」

「……お、お帰りなさい。夢乃さん」


 部屋のドアを開けたら、制服姿のリサちゃんが、とっても驚いた顔をしてた。


「どうしたの? リサちゃん、そんな顔して」

「そんな急にドアが開いたら、誰だってビックリしますよ」

「あ、ごめんね。つい……」

「それで、どうしたんですか?」

「え……何が?」

「そんな汗びっしょりになって、走って帰ってきたんですよね? 何かあったんですか?」

「えっと……別に、何ってわけじゃ、ないんだけど……」


 今日はリサちゃんと話をしようッ! と決めたのはいいんだけど、そんな日に限って飼育委員の当番だった。

 ネコちゃんたちの世話をいい加減にするわけにはいかないから

 ちゃんとエサをあげて、水の取替えをして、掃除をして……ってしてたら、時間がかかっちゃって

 だから走って寮まで帰ってきたんだよね。

 汗を拭こうと思って、バッグからタオルを出そうとしたら。


「はい、どうぞ」

「え。いいよ、自分のあるから」

「構いませんよ。もう、顔中、汗だらけですよ」


 リサちゃんがポンポンって、自分のタオルであたしの汗を拭いてくれる。

 リサちゃんの匂いが、すーっと鼻に入ってきた。


「ありがとう、リサちゃん」

「いいえ、どういたしまして。あ、そうだ。夢乃さん、シャワー浴びます?」

「えっ、そんなに汗臭い?」

「いえ、私もさっき帰ってきたばっかりで、シャワーを浴びに行こうとしてたので。イヤじゃなければどうですか?」



 ……と、言うわけなんだけど、何でこんなにドキドキしてるんだろう。

 シャワーでシャンプーを流してから、トリートメントをつける。

 誰かと一緒にお風呂に入ることなんて、寮暮らしだから珍しいことでも何でもないはずなのに。

 卒業した先輩とか、和佳ちゃんとか、紫月ちゃんとか、あと、ハルちゃんが泊まりに来たときとか。

 うーん……あ! シャワーだからかな? それに、あたしとリサちゃんしかいないし。

 そっか、そうだよね。

 トリートメントを洗い流して、タオルで……あれ? タオルどこだっけ?


「はい、夢乃さん。どうぞ」

「あ、ありがとう」


 リサちゃんからタオルを受け取って、髪の毛の水気を取って、顔を上げたら。


「……!」

「どうしたんですか?」

「……」

「夢乃さーん。どうしたんですかー?」

「……え、あッ! ご、ごめん!」


 慌てて目を反らす。

 ……す、すごい。

 寝るときの下着姿は何度も見てるけど、裸を見たのは初めてだった。

 そう言えば、リサちゃんと一緒にお風呂に入ったことって無いかも。

 学校から帰ってきた後と、朝にシャワーを浴びるから、入らないって言ってたっけ。


「どうしたんですか? 夢乃さん」

「え、えっと……う、ううん、何でもない」


 リサちゃんに背中を向けたまま、ゴシゴシと頭を拭く。

 忘れなきゃって思うんだけど、リサちゃんの身体が目に焼きついちゃって……ダメダメ! 何考えてるのよ、あたし!

 でも……どうすれば、あんなふうになれるんだろう。

 胸もそうだけど、キュッてくびれたウエストとか、ただ細いだけじゃない脚とか。

 リサちゃんが年上なら、まだ希望が持てるのに、まだ中学生なんだよなぁ。

 やっぱり、持って生まれたものなのかなぁ。

 そんなことを考えたたら。


「ゆ・め・の・さんっ」

「ひゃうッ!」


 急に耳元で声がして、思わず振り返った。

 ……ええッ! こ、これ、どういう状況なの?

 あたしは壁を背にして立ってて、そんなあたしを逃がさないようになのか、頭の両側にリサちゃんの腕がある。

 そして目の前にはあたしを見下ろしてるリサちゃんがいるんだけど、タオルは頭に巻かれてるから、身体には何もつけてなくて

 だから、惜しげもなく、堂々とリサちゃんの胸とか、お腹とか……。


「リ、リサちゃん?」

「どうですか?」

「え? どうって、何が……」

「だって、夢乃さん。さっきから、チラチラと見てたので、興味があるのかなって」


 ドキリっとするような表情で、リサちゃんが笑う。

 こういうのを妖艶な笑みっていうのかな……って、何で冷静になってるの?


「ご、ごめんね……そ、その、イヤだったよね……」

「別にイヤじゃないですよ。減る物じゃないですし、まぁ、むしろ減って欲しいんですけどね」

「え! そうなの? もったいないよ」

「そうですか?」

「うん。こんなに立派な胸なのに……」


 あたしには分からないけど、やっぱり大きい人には、大きい人なりの苦労とかあるのかな。

 形も良いのにって、思わず凝視してたら。


「ふぅん……興味があるのは胸なんですね」

「え?」

「もし良かったら、手伝いますよ?」

「手伝うって、何を? ……えッ!」


 リサちゃんの手が、あたしの肩を掴んだ。

 そして。


「……!」


 本当に自然な動きで、リサちゃんの頭が動いて、あたしの胸元に唇が吸い付いた。


「あ、あの……リ、リサちゃ……んッ!」


 ビクッと身体を何かが走り抜けた。

 膝がガクガク震えてる。そんなあたしに構わず、リサちゃんは胸元に何度も何度も口づけを続けてる。

 その度に、身体が痺れて、膝に力が入らなくなる。


「お、ねが、い……も、もう……」


 どれだけの時間が経ったのか分からないけど、ようやくリサちゃんの顔が離れた。

 ズルズルとあたしは崩れるように、お風呂場の床にへたり込む。

 吐息が、身体中が、熱を出したときみたいに熱い。

 頭がぼーっとする。


「さ、夢乃さん。出ましょう」

「……え?」

「夏だからって、このままでいたら、風邪ひいちゃいますよ」

「あ、うん……」

「はい。掴まってください」


 あたしはリサちゃんに抱えられるように浴室を出た。


   ◆


「……はぁ」


 冷たい麦茶が喉を通る。

 やっと落ち着いたけど……もう、ワケがわかんない。


 あたしは食堂のテーブルに突っ伏した。

 あの後、放心状態だったあたしは、気づいたら脱衣所のドレッサーの前に座ってた。

 持って来たTシャツとショートパンツに着替えてて、髪の毛も乾いてた。

 リサちゃんが乾かしてくれたんだと思うけど、覚えてない。

 とりあえず、脱衣所を出たけど、すぐには戻れないし、喉も渇いてたから、食堂に来たんだけど。


 ……リサちゃんはどういうつもりなんだろう。

 あれもスキンシップなの? でも、ちょっと過激すぎじゃない?

 顔とか唇にするならまだしも、胸なんて……。


 リサちゃんの唇の感触が、まだ残ってる。

 それに、あの不思議な、まるで電気が通ったような感覚も、身体が覚えてる。

 イヤじゃなかった。

 驚いたし、恥ずかしかったし……でも、嫌悪感は無かった。

 だから、突き放せなかった。


「……そろそろここを出ないとなぁ」


 もうすぐ、まかないのおばさん達が来るし、それに、寮の他の子がくるかもしれない。

 でも、部屋に戻ってリサちゃんと顔をあわせられるとも思えないし。


「談話室でマンガでも読んで……あれ? あたし、制服どうしたんだろう?」


 今、あたしが持ってるのは、脱いだ下着を入れた袋だけ。

 そう言えば、タオルもない。

 ぼけーっとしてたから、脱衣所に置いてきちゃったのかも。


 あたしは立ち上がって、空のコップを配膳台に置くと、脱衣所に戻った。

 でも。


「あれ? 無いなぁ」


 あたしが使ってたカゴには何も入ってなかった。一応、他のところも探したけど、どこにも無い。

「リサちゃんが間違えたとか?」


 でも、リサちゃんのタオルも制服も無いしなぁ。部屋に戻って聞いてみるしかないみたい。


「……よし! 大丈夫!」


 あたしは深呼吸すると、部屋に戻った。


「あ、お帰りなさい」

「た、ただいま……」


 リサちゃんはいつものように、ベッドの背もたれに寄りかかって寛いでた。

 まるで、何も無かったみたい。


「あのね、リサちゃん……」

「タオルなら、かけておきましたよ」

「え? あ、ホントだ」


 ベランダのタオル干しに、あたしとリサちゃんのタオルがかけてあった。

 じゃあ、制服も? でも、クローゼットの中には、予備の制服が一着、かけられてるだけだった。


「制服は今、洗ってます。ここって、制服用の洗濯機と乾燥機があるんですね」

「あ、うん。あまり使ってないけどね」

「そうなんですか? せっかくあるのに」

「みんな、スプレータイプの衣類用お手入れ剤で済ましてるよ。洗濯するの大変だし」

「もしよかったら、明日から夢乃さんのも洗っておきましょうか? 一着洗うのも二着洗うのも同じですし」

「えっ、そんな、悪いよ……」

「構いませんよ。家でもそうしてましたし」

「へぇ、そうなんだ」

「祖母に教わったんです。女の子が着るものは汚くしててはいけないって。

 料理とか裁縫はダメなんですけど、洗濯と掃除だけは好きだったので、自発的に覚えたんです」

「ふぅん……」


 家事とか一切やらない、お金持ちの家の子なのかなって思ってたんだけど、違ったんだ。

 やっぱり、ハルちゃんの言うとおり、ちゃんと話をしないといけないのかも。


「すみません、こんな話、面白くないですよね」

「え、そんなことないよ。あたし、リサちゃんのこと、もっと聞きたいもん」

「……変わってますね」

「え? 何か言った?」

「いえ、何でもないです。あ、ところで、聞きたいことがあるんですけど」

「うん、いいよ」


 あたしは下着を入れてた袋をクローゼットの隅っこに置いて、リサちゃんの横に座った。


「それで、どうしたの?」

「実はこれなんです」


 リサちゃんが手に持ってた紙をあたしに見せた。


「……入部届け?」

「ええ。今週中に提出するようにって」

「あぁ、そっか。中等部は部活動が必須なんだよ」

「今日、急に担任の先生に言われて……一応、見学はできるみたいなんですけど」


 そう言って、リサちゃんは入部届けに目を戻した。


「どこにするのか決めた?」


 リサちゃんの隣に座って、入部届けの紙を覗き込む。

 下のところにクラスと名前を書く欄があるんだけど、その上にびっしりと部活や同好会、委員会が一覧になってた。


「いえ、まだ……あまりに数が多くて」

「うちの学校、部活の数が多いからね」

「ホント、多過ぎですよ。サッカー部があるのに、フットサル同好会もあるし

 ソフトボール部に野球同好会、テニスも硬式、軟式両方ありますし……」

「スゴイでしょ。勉強だけじゃなくて、しっかりした学生生活を送るためっていう教育方針だからなんだって」

「どうしようかな……」


 入部届けを見ながら、リサちゃんがため息をついた。

 その横顔があまりにキレイで、思わず見とれちゃった。


 ……やっぱり、キレイだなぁ。

 まつ毛も長いし、肌も白くて柔らかそうだし。

 スーッと引いたような、細い眉毛とか……。


「夢乃さん? 何か顔についてます?」

「……え! あ、う、ううん。何でもないっ」

「はぁ、そうですか……」

「あ、あのさ。リサちゃんって、何部だったの?」

「え? あぁ、前の学校ですか?」

「うん。確か聞いたこと無かったなって」

「そうでしたっけ?」


 あれ? って顔で、リサちゃんが首を傾げた。

 そして、何か面白いことを思いついたような顔になって。


「では問題です。わたしは何部だったでしょうか?」

「え! な、何で? いきなり……」

「正解したらステキな賞品もありますよ」

「うーん。部活って言われても……ヒントは無いの?」

「では、運動部と文化部。どっちだと思います?」


 そう言って、リサちゃんがニッコリと笑った。

 うーん……難しいなぁ。

 絵筆を握って絵を描いてるリサちゃんも似合いそうだし、バシッとスパイクを決めるリサちゃんも想像できるし。

 白衣を着て実験してる姿も似合うし、着物姿で茶道とか華道とか。

 あ、料理とお裁縫は苦手だって言ってたよね。


「さぁ、どっちでしょう?」


 リサちゃんが楽しそうにあたしを見てる。

 そう言えば、こんなふうに並んで喋るのって久しぶりかも。

 橋の下で喋って……あ!


「運動部!」

「どうしてですか?」

「ほら、あの土手で喋ったあと、リサちゃんスルスルって下に降りたでしょ? 運動神経がいいんだろうなって思い出したの」

「なるほど……正解です」

「やったーッ!」

「それでは、何部だったでしょうか?」

「えー、まだ多すぎない?」

「そうですか? かなり減ったと思いますけど」

「それでも多いよぉ。じゃあ、屋内? それとも屋外?」

「仕方ないですね。屋外競技ですよ」

「うーん……」


 屋外ってことはテニス?

 サッカーとかソフトボールも屋外競技だよね。

 何かヒントは無いかなぁ。

 チラッとリサちゃんを見たけれど。


「ヒントはありませんよ」


 だって。

 よーし、こうなったら、絶対に当ててみせるぞ!


 運動部ってことは、体を使うんだよね。体かぁ……ッ!

 忘れかけてた記憶がすーっと蘇る。

 あー、せっかく薄れ掛けてたのに!

 でも、リサちゃん、運動してたからあんなにスタイルいいのかなぁ。

 背も高いし、脚だってスラっとしてて……あ!


 そう言えば、さっき。

『むしろ減って欲しいんですけどね』

 あれって、どういう意味だったんだろう。

 やっぱり胸のことなのかなぁ。

 でも、運動してる人って、全員がスレンダーってワケでも無いよねぇ……。


「さて、そろそろカウントダウンに入ります」

「え、制限時間があるの?」

「はい。なお間違えたら罰ゲームが待ってますから」


 イタズラを思いついたような子どもの目つきで、リサちゃんがあたしを見た。

 ま、まさか、さっきみたいなことを、ここで?


「5、4、3……」

「えっと、えっと……あ! 陸上!」

「え……」

「もしかして、正解?」

「……なんでそう思ったんですか?」

「さっきお風呂で『減って欲しい』って言ってたでしょ? それで思い出したんだ。

 ハルちゃん、ってあたしの友達なんだけど、体育のときにツライって」

「……ふふっ」

「リサちゃん?」

「ふふふ……あははははッ」


 リサちゃんが弾けたように笑い出した。

 でも、別にあたしは驚かない。

 だって、これがリサちゃんだもん。

 あの頃は莉紗さんって呼んでたけど……あ。

 もしかして、寮に来て初めてじゃない? この大笑いするのって。


「ご、ごめんなさい。つい……」

「ううん、いいよ。だって、それが本当のリサちゃんなんでしょ?」

「……え?」


 あたしはジッとリサちゃんの顔を見上げた。


「橋のところで会ってた頃は、リサちゃん、いっつも笑ってたよね。

 でも、一緒に生活するようになって、もっと長い時間、一緒にいるようになったのに

 リサちゃんの笑い声をきいていなかったって、気がついたんだ」

「夢乃さん……」


 あたしはリサちゃんに甘えてたんだと思う。

 頭もいいし、何でも器用にこなせちゃうし、だから、何にも問題ないって思ってた。

 でも、リサちゃんはこっちに来たばっかりで、学校のことも、寮のことも、知らないことの方が多いはずなんだ。

 本当は、いろいろ教えてあげたり、慣れるまでフォローしなくちゃいけなかったのに。

 休み時間に、放課後に、一人で過ごしてるリサちゃんを想像したら、チクンって心が痛んだ。


「ごめんね、リサちゃん」

「え……ど……あの……」

「何か、湿っぽくなっちゃったね。えーっと、うん。だから、もっといろんな話を聞かせて。もっともっとリサちゃんのこと、知りたいから」

「話をって言われても……」

「例えば、さっき大笑いした理由とか。そんなツボなこと、あたし言ったっけ?」

「……ええ、言いましたよ。夢乃さんに対する認識がガラッと変わるようなことを」

「え、そうなの?」

「はい。実は、意外とエッチだったって分かりました」


「……へ? あ、あたしが? な、何で!」

「だって、私の胸ばっかり気にしてるじゃないですか」

「え! そ、そんなこと! だ、だって、さっき、減った方がいいって、リサちゃんが言ったんだよ?」

「それは身長とか体重の話です。小学生の頃は平均的だったのに、一昨年の終わり頃から、どんどん大きくなっちゃって」

「そ、そうだったんだ……」


 あたしは運動とか得意じゃないし、部活も運動部じゃないから分かんないけど、あまり背が大きいのもダメなのかな。


「それなのに、夢乃さんってば、胸のことばっかりで……だから、つい可笑しくなっちゃったんですよ」

「そ、そう……あ、あはは、は……」

「ところで、夢乃さんって、他の人にもそうなんですか?」

「え? 胸のこと?」

「それもありますけど……」


 リサちゃんがそう言った瞬間。自然に唇が奪われてた。

 トクッ、トクッって、心臓の鼓動が速くなる。


「無防備過ぎですよ。夢乃さん」

「こ、こんなことするの、リサちゃんだけだよ!」

「そうですか」

「そ、そうだよ。海外では普通かもしれないけど、その、キスなんてしたことないし……」

「……夢乃さんは」

「え?」

「夢乃さんは、イヤですか? キスされるの」

「えッ! えっと、その……」


 そーっと、リサちゃんの様子を伺うように見上げる。

 でも、リサちゃんが何を考えてるのか、あたしには読み取れなかった。

 いつもの楽しそうな笑顔で、リサちゃんはあたしを見返してる。


 ……どう答えればいいんだろう。

 イヤじゃないけど、でも、そんなの恥ずかしくって言えないし。

 だから、あたしは黙ったまま、首を横に振った。


「どうしてですか?」

「……え?」

「どうして、イヤじゃないんですか?」

「どうしてって……」


 恥ずかしいけど、イヤじゃないから?

 でも、それじゃ理由になってないよね。

 よく分かんない……。


「さてと。そろそろ洗濯が終わったと思うので、見てきますね」

「え? あ、うん……」


 急にリサちゃんは立ち上がると、スタスタと部屋から出て行った。

 一人、残されたあたしは、うーんってうなったまま、ベッドに寝転がった。

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