第六話 Suspicion

見上げる程の大きな城門を抜け、門番に軽い挨拶をする。城郭都市というのだろうか。王城を中心に広がったこの街は、周りを分厚い壁で覆われている。


とりあえずギルドへと真っ先に向かった俺はレイラに事情を説明した。



「要するに、たまたま通りかかった物凄く強い冒険者がアグラードを跡形もなく消し飛ばしたんですね?」



「ああ、信じられないだろ?」



「信じられませんよ。だってCランクのモンスターですよ?跡形もなく消し飛ばすなんて、上級以上の魔法か上級役職スキルでしか有り得ませんし」



少々言い訳が強引過ぎただろうか、レイラは疑いの眼差しで俺を見つめてきた。よくよく考えてみれば不審な点が多すぎるし、あまりにも出来過ぎた話だ。



「詳しいことはあまり覚えてないんだ。だから報酬金も受け取らないよ」



「いえ、その話が事実であるなら受け取って貰っても構いませんよ。今回に限り、大目に見てあげます」



レイラは可愛らしくウィンクをして依頼書に判子を押す。その時何かを思い出したように声をあげた。



「あ、でもギルドカードは更新出来ませんよ?本来ならCランクに昇格するんですが、今回カイトさんはアグラードを倒していないみたいなので」



「ああ、それで構わないよ」



報酬金を貰えるのにランクまで上げろなんて贅沢は言わない。まぁ本当は俺が倒したのだが、そんな事を言ってしまえば理由を聞かれてしまう。まさかGスキルを持ってるから、なんて言える訳がないし。



「あのさ、一つ聞きたいんだけど」



「何でしょう?」



「このランスロード王国にGスキルを持ってる人ってどのくらいいるんだ?」



神のスキルだから必然と目立つだろうし、Gスキルの名前を知らないはずがないと考えた俺はそう質問した。



「うーん、私にもよく分からないですね。うろ覚えですが、たしか遠い昔に魔王を倒した勇者がGスキルを持っていたっていうのは聞いたことがあります」



遠い昔っていつくらいだろうか。てかその時からこの世界の神達はスキルの譲渡を行っていたんだな。それにしても勇者と魔王がいるとは、やっぱりここは異世界なんだ。



「昔は勇者なんてのもいたんだな」



「はい、今はフランデッタの地に埋葬されています。というか結構有名な話ですよ?知らなかったんですか?」



「そういうことには疎いんだ」



聞いた限りでは昔話に出てくる桃太郎のような存在なのだろうか。この勇者の話も時間があれば聞いてみたい。どうやって魔王を倒したのか気になるし。



「あ、そういえば王国騎士団から依頼書が出されていますよ」



「どういう内容なんだ?」



「煉獄魔龍ヴァンザドールの大規模討伐です。本来はA以上のランクが必要なのですが、どうやら安全な後衛班の募集もあるみたいなのでどうですか?これを機に王国騎士団と交流を深めることが出来るかもしれませんよ!」



いや、王国騎士団と交流を深めるのは避けたいな。何故なら既にあそこの団長から疑われているからだ。あのエリーゼの鋭い視線を思い出すと体の震えが止まらない。あれは視線で人を殺せるレベルだ。




「いや、危なそうだから止め……」



「報酬金も大量にありますよ」



「行かせて頂きます」



考えてみればこの世界のお金は今回の報酬金しか持っていない。まだまだ必要な物もあるだろうし、ここの生活に慣れるためにもある程度のお金は持っていた方がいいだろうな。

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