第2話 夏休みの宿題
「とりあえずケガしないで始業式来るように。以上」この既視感も全部それだったんだな。大宮先生のお見送りを眺めながらそう思う。このループは、終業式の日付で始まっている。そして、彼女の誕生日である9月1日を迎えないうちにこの7月の21日に戻ってくる。それまでに何かを解決しなければならない。
「ゆうまー」船津だ。俺がこの間ループについて相談した相手だ。
「あ、船津……あのさ、こないだは……」あ。そっか。俺のこないだはこいつのこないだじゃなかったな。
「なんだ?」
「……借りたい本があってさ。ループものなんだけど」
「あれか?これからアニメ化するからな。お前も意外と単純かぁ。……じゃなくて、遊びに行こうぜ。」
「すまん。先約があるから」
「珠美ちゃんか」
「そうです」なんだかかしこまってしまったぜ。
「じゃあ今度な。僕は友達がいないからよろしくな」
「冗談とは言えそういうのはやめてくれ」まぁこいつは自分一人の世界があって一人がさみしいとは思わないんだろうけどな。
少しずつ駆け出す。早く声をかけないと、珠美の背中は俺を待たずに一人でどこかへ行ってしまう。
「珠美、」声をかけるとようやく俺の方を見てくれる。後ろから走る音がしたら振りむいたほうがいいんじゃないかなーとも思うけど。危ないよ。
「一緒に帰ろう」
「あ、うん」……俺が告白して付き合いだした。珠美はたぶん、他のやつから見て特別にかわいいわけではないんだろうけど、俺はすごくかわいいと思う。
「見たい映画とか、ある?」
「……特にはない」ないならいいか。
「……見たいやつがあるんだけど一緒に行こう?」
「……わかった」
珠美はいつも、俺に付き合ってくれる。なんだか、申し訳ない感じだ。ループ分俺はそういうのを多く気にしないといけないんだけど。せめて彼女も楽しい夏休みをと願うばかりだ。
がんばろう。
「ゆうまー」船津だ。なんだっけ?
「おう」
「本だけ渡しに来た。これから僕は塾だけど……」あぁ、そうか。
「ありがとう。ダッシュで読むけど他にもループものって持ってるか?」
「あ、あーあと1種類……でも姉ちゃんが何か持ってるかもしれない」
「じゃあそれも今度。今度は俺が取りに行くよ。ありがとう」
その姿を見送る。そしてまた何かと競うように階段を駆け上がり、飢えた獣のように……本を読む。血眼である。
そして読み終えて、困る。まず誰、あるいは何が原因か突き止める必要があるのだ。そしてそのあとその人の願いを叶える必要がある……のかな。
そしてこの夏、俺はループものを読み漁った。珠美といられなかったのは残念だったけど、俺はループから元の世界に戻るヒントを手に入れた……はずだ。
そして俺は夏休みが終わったばかりの彼女の誕生日を祝おうとその文字を書く。時刻は23時過ぎ。少し早かったけれど、送信をセットしておけばいい。
『誕生日おめでとう。今年は水族館に行こう。』
そしてその誕生日メッセージを送信した瞬間、俺の意識は暗転した。
If Subjects = Achieve Then
Date = Continue
Else
Date = Return
End If
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