第7話 ~SIDE Y~
こんな大勢の目の前で大胆にもキスを仕掛けてきた珠緒は、今俺の腕の中ですやすやと寝息を立てている。
可愛い奴だ。一丁前に嫉妬して独占欲を剥き出しにしたようだ。
周りは一連の俺たちの行動を見て言葉を無くしているようで、まだ静かなままだ。
俺が蹴り飛ばした男はまだ意識が戻らないらしいし、俺にキスを仕掛けた女は泣いている。
珠緒が慕っている留年していた先輩とやらは、開いた口がふさがらないらしい。
さて、どうしたものか。
「あー……就職おめでとうございます。珠緒酔ってるんで連れて帰ります」
「お、おう……」
「その人にも目覚めたら謝っといてください。それじゃ」
この場所の中心人物である珠緒の先輩に声をかけ、珠緒の荷物を拾い上げ居酒屋を後にする。
手の中の温もりと重みが心地よい。
やはり俺に色や感情を与えられるのは珠緒しかいないと痛感する。
寝ている珠緒の顔に何度も触れるだけのキスを落とす。
それがくすぐったいのか、俺の腕の中で頻りに身を捩っている。
「珠緒俺はやっとわかったよ。早く目覚ませ」
俺から珠緒を奪うような奴はいなくなればいい。
珠緒から俺を奪うような奴もいなくなればいい。
俺と珠緒二人だけになるためにどうすればいいか。
よく考えたら簡単だ。
産まれる前と同じように一つになれば良いのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます