第8話 ~SIDE T~
暖かいのに何故か肌寒くて身を竦ませる。
目を開くと見慣れた善也の部屋だった。
どうやらソファの上に寝かされているらしいが、違和感を感じる。
慌てて視線を下に向けると、一糸纏わぬ姿でそこにいた。
「は?何で?」
「起きたか」
「善也、俺もしかして吐い……」
た?と続けるはずの言葉は、善也の姿を見て続くことはできなかった。
ソファの上、裸の俺。そして同じく裸の善也。
風呂上りにも何度か遭遇しているし、彼女との性行為にも遭遇したこともある。
でもこの体制、この距離では初めての経験だった。
こうしてみると本当に善也はプリンスという言葉がぴったりだと思う。
適度に体についた筋肉も、無駄のない肉体も、まるで芸術品のようだ。
それに比べて俺の体は筋肉は付きづらく、柔らか味を帯びていて恥ずかしくなってしまう。
「ねぇ?一体全体なにこれ?」
頭の片隅でこの体制になっている答えが出ているのに俺は聞いてみる。
善也からの答えがほしくて。
「俺とお前はきっと産まれる前は一つだったんだと思ってる」
「うん」
「珠緒以外がやってもどうも思わない行動が、珠緒がやるだけで俺に意味を齎す」
うん、それは俺も一緒だよ善也。
たぶん善也以外の友達に善也と同じことを求められたとして、俺はそれに答えることができない。
善也だから。
「一つだったものが二つになって、別々の存在になったら周りが更に別々にしようと手を出してきた。俺はそれがもう我慢できない」
「うん」
「お前の事を俺以外の人間が触れるのも嫌だ。お前が俺以外の人間と一緒にいるのも嫌だ。お前が俺以外の人間の事を考ええているのも嫌だ」
「うん」
「だから今から俺たちは一つになる。もう誰にも邪魔をされないように……」
人と関わりを持つんだからほかの人間と触れ合うのは回避できない。
それが社会に出て社会で生きていくということなんだと思う。
でもそれすらも嫌だと言う幼馴染のプリンス様。
でもね……
「俺だって嫌だよ。善也が俺以外の子に優しくするのを見るの。ねぇ善也。早く元の形に戻ろうよ」
酔っていた時に見たあの光景。
俺から善也を取るあの先輩の事を殺したくなるくらい嫌いになった。
善也の言う通り一つになることが本来の姿なら……。
きっとそれはとても素敵なことなんだと思う。
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