第3話 ~SIDE Y~
『私と友達とどっちが大事なのよ!』
過去に何度も彼女たちから怒鳴られた言葉。
彼女と友達ならば彼女の方が大事だ。
彼女たちは俺の体も心も癒してくれる。
だが、彼女と珠緒ならば……。
そんな事を聞くのが間違っている、比べる位置が違うのだから。
『今日は先輩の家に泊まります。おやすみなさい』
昔からあまり夜更かしの出来ない珠緒。
そんな珠緒からの連絡は日付の変わる前にいつも来る。
だが今日の内容は俺を不快にさせるには十分なものだった。
そこに泊まるのならば、なぜここに泊まれないのだ。
そもそも帰るといってなぜ実家に帰っていないのか。
こことそこどう違う?ここよりそこが勝っている理由は?
聞きたいことも問い質したい事もたくさんあったが、とりあえずはいつも通り『おやすみ』とメールを返す。
俺の送信ボックスは珠緒で溢れ返っている。
基本的に親とのやり取りは電話で行う。彼女からメールは来るがそれに返信することはすくない。
受信も珠緒だけで埋まればいいのにと思うが、彼女という存在が居る所為でそれは叶わない。
歴代の彼女の中に妙に勘が鋭いやつが居た。
『珠緒くんって善也の何?』
その質問の答えは俺には難しくて答えることが出来ない。
友達といえば否だし。家族と聞かれても否。
恋人でも否。
では俺にとって珠緒とは何なのだろうか?
俺の欲や感情は全て珠緒に繋がっている。
珠緒が作る飯だから自分から口にすることが出来るし、珠緒と同じ布団に入っているから安眠できる。
怒りも悲しみも喜びも何もかも、珠緒が関わるだけでダイレクトに心に響いてくる。
そんな世界想像もしたくはないが、珠緒の居ない世界はきっと俺にとっては色も無くて味も無くてとても退屈でつまらない世界なのだろうと思う。
例えばその欲望を全て珠緒に向けたらどうなるだろうか?
三大欲求の食欲睡欲性欲。
珠緒と食べる……珠緒を食べる?
珠緒と寝る……珠緒と重なる?
珠緒と性欲……珠緒を抱く?
結局いくら考えてもどれもピンと来るようで来なかった。
珠緒は女ではないし、俺だって彼女にしたいわけではない。
俺が望むこと……それは珠緒と一つになること。
産まれたとき二つに別れた俺と珠緒。
それを本来の位置に。
そうする事が俺の望みだった。
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