第15話

「何ニヤケてんの~?あ、もしかしてさっきの子?可愛かったよね~?紹介してあげようか?」

「要りませんよ。」

今はそれどころではないのだ。早く部室の精霊(滝先輩)の怒りを沈めなければ。

大会の資料を手にした俺は早々に職員室を出ようとしたが、そこで捕まった。


「石動くん、実はお願いがあるんだけど。」

「え、今ですか?今はちょっと別件の依頼を消化中なんですが。」

「知らねーよバカ。」

「えぇ~・・・。」


職員室を出た俺は滝先輩の待つ部室へと戻った。


すると滝先輩は、すでに一人で棋譜を見ながら石を並べて戦術を研究していた。

気配を察したのか、先輩は俺の方を向いて声をかけてきた。

「お、すまんな。資料そこの机の上に置いといてくれ。」

どうやら精霊は冷静さを取り戻したらしい。

「わかりました。じゃあここに置いておきます。」


そう言って資料を机の上に置いた俺は踵を返し、部室の入り口の方へ向かう。

「っておい、どこ行くんだよ、今から一緒に打つぞ?」

「すいません先輩、実は用事ができちゃって、少ししたら戻りますから。」


まったく、職員室ですれ違った女の子に渡しそびれた書類を届けて欲しいって。

広岡先生、わざと渡し忘れたわけじゃないよな?校庭のどこかにいるはずとは

言っていたが、一体どこに行ったんだろう。


(byアオケン)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る