第12話

「あっはっはそういうことだったのね」

先生が屈託のない笑顔を見せる。

どうやら教育実習が始まる前の打ち合わせの際に屋上に来て、その帰りに鍵を落としたらしい。

そこをたまたま俺が拾ったということだったらしい。

こっちからしたらネコババ、向こうからしたら落し物を拾ってくれた恩人というわけだ。


「じゃあ届け出なかったことは秘密にしてあげるから、あたしが勝手に屋上の鍵使ってたことは内緒ね?」

「うーん、それはセンセーの態度次第ですね〜」

「あっ、ひどーい立場は対等だぞー」

先生は柵の前の一段高いふちにピョンっと飛び乗った。

「運命共同体だねっ!」

同じ目線の高さで屈託なく言う。

「そんな大げさな」

言いながらもジッと見つめられて、思わず目線を逸らしてしまう。

またピョンと降りて、ドアの方へスタスタと歩いていく先生。

「暗くなる前に帰るんだぞ〜」

少しドキドキしながら先生が出て行ったドアをボーッと見つめていた。



しばらく見ていたあと思い出す。

「…鍵返し忘れた」


(byりよた)

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