第4話守れる力を得るために
ようやく言葉を話せるようになった。
エレナやクレイル、家政婦達もあまりの早さに驚いているようだった。
言葉を話せれば情報を集められると思っていたが、子供に暗い話をするような奴はいない。
結局直接情報を手に入れるのはきびしく、家政婦達の立ち話や、エレナとクレイルの話を、盗み聞きすることで、情報を集めた。
まずエレナを狙うため、この家を取り潰すことは、国王が反対しているため、まだ時間的余裕があるようだ。
だがいつ取り潰されてもいいように、クレイルは二つの案をだしていた。
一つはクレイルは反対だが、極力良い関係を持っている貴族の元に嫁ぐ。
二つ目はエレナの取り合いに参加していない貴族の中で、良い関係を結べている貴族の領地で、その領民として暮らすということだ、実際には魔法を使えるものはかなり希少な存在らしく、エレナは下級貴族扱いになり、国からの援助金が入るのと、この家の財産があるため、生活は困らないだろうとのことだ。
この二つ目は色ボケしている貴族が、強引に領地からエレナを奪取しに来る可能性もあるが、クレイルがそれを阻止するという話だった。
クレイル……。
そんなに強いのか。
二つ目の案でいくことで、エレナとクレイルの意思は固まった。
そしてその夜、俺もある決意をした。
「かあさま、僕に魔法を教えてくれませんか」
エレナは目を見開き驚いていた。
正直子供の話し方は、かなり恥ずかしかったが、慣れるしかあるまいと諦めることにした。
「どうしたの、魔法はとっても危ないものだし、できないことも多いの、それにあなたにはまだ早いわ」
にこやかにこちらに笑顔を向けながら、諭してくる。
「できない人もいるの?」
「ええ、ほとんどの人はできないのよ。いずれセインも勉強するからそれまで辛抱しましょう?」
「僕……かあさまを守れるよう強くなりたいんです! だからお願いおしえて!」
エレナは勢いよく立ち上がり、廊下の方にスタスタと歩いていき、ドアを勢い良く開け放った。
まずい、食い下がりすぎたか……。
「クレイル!! 聞いた!? 私のセインがかあさまを守れるようにって! ああもうほんとに可愛い!!」
「奥様落ち着いてください」
エレナの興奮した声と、たじたじのクレイルの声が廊下から聞こえてくる。
なるほどこの手は使えるな。うん。
ドアを開け部屋に戻ってきた。
「分かったわセイン、魔法を使えるかどうかの適性を調べましょう」
連れてこられたのは、本が一面を覆っている部屋だった。
普段は鍵が閉まっていたため、この部屋は調べていなかった。
エレナの説明だと、まず魔法には種類がある。
・火魔法
・水魔法
・土魔法
・風魔法
・光魔法-神聖魔法
・闇魔法-暗黒魔法
・治療魔法
・召喚魔法
神聖魔法は光魔法を極めていくことにより使えるようになる。
神聖魔法の中には、死者を復活させたりするものがある。
そこまでの神聖魔法を使えるのは、神聖帝国の最強の聖騎士といわれている人だけと言われている。
暗黒魔法もしかりで、闇魔法を極めると使えるようになるらしい。
こちらはアンデッドを作り出したり、相手に死の呪いをかけられるそうだ。実際そこまで極めたものは、歴史に名を残すような数人しかおらず、現在ではいないと言われているらしい。
現在では暗黒魔法を使う中で一番知られているのは、魔国の王とのことだ。
他の魔法は名前そのままらしい。極めればどれも一騎当千の力くらいになるらしい。
一騎当千になるような人物は、1つの国に片手か両手で数えられるくらいしかいないそうだ。
十分多いと思うが……。
召喚魔法は召喚相手と契約しなければならないのだが、大概は契約などという召喚される側に不利益なものをさせてくれないため、使える人間はほぼいないそうだ。
大体の説明を終え、エレナが魔法陣を書いた紙を持ってくる。
「この魔法陣に手を置いて、体の中の血が手に集まるイメージを浮かべるの」
「魔法適性があれば、この紙の中心の魔法陣が一部分だけ光るわ」
「強い力であれば、この紙の魔法陣の部分、全体が光ります」
説明にそって、血が流れ、右手に集まるイメージを浮かべていく、目を閉じ意識を集中させ、どんどんと流れていくイメージを強くしていく。
「え……」
エリナの驚いた声が聞こえ目を開けると、魔法陣からまるで閃光のような光が放射状に何本も伸びている。
「うわっ!?」
突如、魔法陣が書かれた紙が爆散し、紙吹雪のようになって上から舞い落ちてくる。
「……こんな大きな力、聞いたことがないわ……」
「奥様!!」
爆散した音をきいてクレイルがドアを勢い良く開け入ってきた。
クレイルに目も向けずエレナが俺の方に両手を置き、詰め寄る。
「セイン。このことは絶対に誰にも言ってはいけません。今ここで約束してください」
いつもの優しい笑顔からはかけ離れた、真剣な眼差を向けてくる。
俺は俺でかなり焦っていた。
ささやかな祝福とはなんぞやと言わんばかりの適性なんじゃないのか……。
セレス様よ……そりゃあゼウスのとっつぁんも怒るよ……。
もしくはセレスと話していた時、かなり機嫌が良くなっていたので、サービスしてくれたのかもしれない。
とりあえず、強い力は面倒を吸い寄せエレナに迷惑をかけるだろうと察した。
「分かりましたかあさま。この部屋であったことは誰にも言いません」
「良い子ねセイン」
いつもの優しい眼差しのエレナに戻り、クレイルの方に振り返る。
「クレイル、この子は凄まじい力を持っているわ。今気づかれてしまうと、この子の身に危険があるかもしれません」
「大きな力は制御できなければ、この子自身も危ないから、魔法を教えていこうと思います。ですが、あくまで魔力適性が人並みにある子というように、外の人間には見えるように隠していきます。家政婦長以外は流言の可能性があるので今日限りで解雇し、十分な退職金を渡してあげなさい」
「承知致しました。奥様」
エレナを守れる力がせめて欲しいと思い、魔法を教えてもらおうと思ったのだが、逆にエレナの面倒ごとをかなり増やしてしまったのではないか……。
面倒に釣り合うだけの、守れる力をつけなければと、ギュッと拳を握りこみ決意を深く心に刻み付けた。
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