蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-【短編版】

星里有乃

第1話


みなさん、はじめまして。

俺の名前は結崎イクト。

どこにでもいる普通の高校生だ。

でも俺にはちょっとした秘密がある。


それは……


「おいっ危ないぞ!」

そう声をかけられた時には

もう俺の意識は飛んでいて

長い眠りについていた。


「おにーちゃん。

起きてよぉ! もう朝だよ!」


いかにもアニオタが喜びそうな

萌えボイスで起こされると

俺は知らない部屋の西洋風のベッドにいた。


目の前にはツインテピンク髪のロリっぽい美少女と

黒髪ロングの清楚系の美少女がいる。


「ふふっ。

起きたんですね。

朝食、出来てますよ」


いかにも清楚系ヒロインっぽい方が

俺のことを甲斐甲斐しく世話し始めた。


ここはどこだ。

俺はどうしてこんなところにいる?


「あの、あなた達は俺と知り合いじゃないですよね?どうして俺の世話をするんです? それにここはどこ……?」


2人は顔を見合わせた。


「もしかして覚えていらっしゃらないんですか?勇者様……」


「おにーちゃん、あたし達をモンスターから助けてくれて……気絶しちゃったからこうやってマリアおねーちゃんと看病しているんだよ」


ピンク髪の方はちょっと涙目だ。

勇者様……? なんの話だ……?


「これも魔王グランディアの仕業なのかもしれませんね……。 アースプラネットはもうダメなのかしら?」


アースプラネット……

魔王グランディア……

俺は友人に無理やり渡された

美少女ハーレムRPGを思い出した。


この女達はそのゲームに出てくるヒロイン達にそっくりだ。


『異世界転生』


というものだろうか?


魔王の呪いにより

街から男達が消えた。

女達は神に勇者の復活を願う。

やがて異世界から

選ばれし若者がやって来て

アースプラネットを救うのだ。


まぁなんていうか

勇者もてまくりの

美少女ハーレムRPG

というものである。


だが、

俺はそんなハーレム異世界に

まったく興味がない。

むしろ苦痛だ。


俺は女アレルギーだ。


どういう訳か女と接近すると

気絶したりジンマシンが出たりする。

さっきピンク髪が話していた

オレが気絶したというのも

女アレルギーの発作が起きたんだろう。


その後

強制イベントなのか

勇者復活の宴が開かれ、

露出度の高い踊り子や

可愛らしい衣装に身を包んだ

美少女達に俺は囲まれていた。


「俺、魔王を倒してきます。」


こんな美少女だらけのハーレム空間に長居するなんてゴメンだ。

早く街を出て魔王とやらを倒し、

現実世界に戻るんだ。


すると一族の族長が

俺を引き止めてきた。


「お待ちくだされ。勇者どの。

この世界で男はお主ひとり……

せめてこの街の若い娘達と

子供を作ってから

魔王討伐に行って欲しいのじゃ……

でなければ

わしら一族は滅んでしまう」


やたら露出した美少女達が

頬を赤らめながら見つめてくる。


冗談じゃない!

女と子供を作るなんて!

そんなことしたら

発作を起こしすぎて

大変なことになってしまう!


街を出ようとしても

ハーレムイベントが強制的に

起こるせいで

なかなか街を出ることができない。


くっ

こうなったら

口から出任せで切り抜けてやる。


「族長……

俺は勇者であり

聖職者でもあります。

異性とそういう関係になってしまうと

魔王を倒す聖なる力も

失われてしまうのです。

ご理解下さい。

必ずやこの世界の男達を

再びこの地に

連れ戻してまいりましょう」


女達は皆驚いている。

そして何故か涙を流し始めた。


「なんという強い心の持ち主。

なんて清いお方なの! ?」

「勇者様よ!

この汚れない魂

このお方は本物の勇者様だわ!」


ただ単に女アレルギーなだけ

なんだけど……。

まぁいいや。


すると空が暗くなり超美形の姿が

上空に映し出された。


「我は魔王グランディア……

異世界より現れし勇者よ

我を倒したければ

冥界に来い。

……辿り着ければ……な」


なんだか女みたいな見た目の魔王だな

苦手なタイプだ。


格闘家の

ツインテピンク髪ロリ美少女アイラと

白魔法の使い手である

黒髪ロング清楚系美少女マリアを

お供に俺は冥界を目指すことになった。


この2人はシナリオ上、

強制メンバーで外すことは

出来ないらしい。


仕方ないので

マントやローブを羽織らせ

極力露出度を下げてもらい

女アレルギーの発作を起こりにくくしてもらった。


(表向きは俺の聖なる力を

保つため露出を抑えるように頼んだ)


本来は5人ヒロインが登場するらしいので、かなり女の割合を下げた方だ。


冥界への旅路は

あっさりモンスターを倒せるものの

ハーレムイベントが乱立するせいで

俺は何度も女アレルギーの発作を起こし、そのせいで幾度となくピンチに陥った。


「当ててんのよ」

「お風呂でバッタリ」

「不可抗力でタッチやチラっ」


など思い出すだけでも

おそろしい

ハーレムイベントの連発だった……。


そして

紆余曲折を経て

必死の思いで魔王城に辿り着いた。


「ついに来たんですね。 私達……」

「おにーちゃん……3人で頑張れば

大丈夫だよね?」


バトル自体はモンスターが超弱いので

大丈夫だろう。


問題は美少女ハーレムゲーム特有のハーレムイベントである。


魔王を討伐することで

どんなハーレムエンディングが待ち受けているのやら。


超弱いモンスター達を倒し

魔王の玉座に入ると

そこには

銀髪ロングヘア超美少女が

ウエディングドレスを着て

潤んだ瞳で俺を見つめていた。


よく見ると

その女は魔王本人だった。

魔王は女だったのだ。


「どうして思い出してくれないの?

私が魔族だから?

魔王だから?

結婚しようって言ってくれたよね?

イクト君……。

思い出して……」


その時俺の頭に

記憶が蘇ってきた。


俺は子供の頃

魔王に会ったことがある。

隣の家に住んでいた

銀髪の美少女……

アースプラネット

という世界から

やってきたと

俺にこっそり教えてくれた。


「大きくなったら

結婚しようね。

約束だよ。

浮気しちゃダメだよ!

指切りしたよ!」


あの頃はまだ

女アレルギーではなかった。

あの指切り以降

俺は

魔王以外の女に接触すると

アレルギーを起こす体質になったんだ。


そんなわけで、

女アレルギーを治すには

魔王と結婚するしかなく、

俺は世界平和の名目で

魔王を嫁にしたのである。

だがとっても

幸せなので問題ない。


魔王いわく

指切りに魔族の呪いの力はないそうだ。

なので女アレルギーの原因は不明である。

でも本来呪いというのは

約束を破ったりすると

起こるらしいのだ。


みなさんも

女の子と約束をしていたなら

きちんと守るように!


俺みたいに

不思議なアレルギーになるかも

しれないよ!


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