兎妃 綾人の恋

第4話. 兎妃 綾人の恋・上

「・・・・・・ぅ・・・くッ」

「ふふ・・・♡ ・・・ねえ、僕そろそろイッていい?」

「ん・・・・・・い、いっしょ・・・に ―――ッ!」


「じゃ・・・・・・僕、もう行くね?」

「んだよ・・・・・・それ。 ヤったら『はいサヨナラ』かよ」

「ん~ でもさ、僕明日も学校あるから。それに自分のベッドじゃなきゃ寝らんないんだよね・・・・・・ごめんね?」

「・・・・・・・・・・・・チッ」


(あ~ 眠たいな。はやく帰って寝たい・・・・・・)


                ☆ ☆ ☆


作者「ん? ・・・!? わ―――ッ! もうはじまっちゃってるよ―――ッ!!

は、はやくっ! はやくぅ! ちょっと! 詩音くん! 上↑ 上↑ はなし進んじゃってるから! 急いで!」

優月「―――も~ やだよ、ぼく~ だって・・・『彼』の話でしょ~? これ~ ぼく苦手なんだよ『彼』。だって、涼しい顔してその実中身がエグいんだもん~ しかも男も女も見境なしに手出しまくってるんだよ~? ぼく『彼』とは関わり合いになりたくないんだけど~」

作者「そそそ、そんなこと言わないでえ~~~! 泣いちゃうよ!? ほんと! もうわんわん泣いちゃうから! 断ったら泣くから!」

優月「・・・・・・うざ。はあ・・・わかったよ。やればいいんだろ? やれば。で? ぼくどうしたらいいの?」

作者「え!? ホント!? やった―――♡♡ ありがとね♡ グラ~ッチェ♡ じゃ、さっそくだけど、詩音くんには『兎妃 綾人の恋』のナビゲーターを務めてもらいたいの! できる? できるよね? ―――あーッ! ストップ! なにも言わないで! あのね? あのね? 聞いて? これから綾人くんが活躍してくれるはずだから、詩音くんはただカンペ通りに話進めてくれたらいいわけ! ね? かんたんでしょ?」

優月「ね? って・・・・・・。 なんかメンド~ てかさ、作者はあなたなんだから、自分でやればいいのに~」

作者「・・・・・・・・・・・・え? ホント!? 快く引き受けてくれると? それは助かる! もうさ~ 大地くんの話んときは誰も捕まんなくてさ~ ボクがナビったんだけど~ もうボロボロで~ なぜか中の人につっ込まれるし~ やんなっちゃう! ―――ま、じゃ! そゆことで! ヨロシク! サラバだ!」

優月「あ! ちょ! ・・・・・・あ~あ・・・行っちゃった。ほんと、勝手。なに? あのひと。『サラバだー』だって。ムカつく。 ・・・・・・仕方ない」


第二章、兎妃 綾人の恋、ナビゲーターを務めさせてもらうのは、ぼく「優月ゆづき 詩音しおん」です。ぼくは翡翠ヶ丘学園高等部三年、兎妃くんはぼくの後輩にあたります。が、彼とぼくでは価値観も身元の緩さも違うので、ナビに心がこもってなくても許してくださいね! では、はじまり~ はじまり~


                ★ ☆ ☆


行き交う人びとの喧騒、競い合い瞬く歓楽街のネオン。

翡翠ヶ丘の外れ、独立した雑居の街。ネオン街とも花街とも悪声の誉れ高い、終宵の不夜城。

軒並み並ぶ飲み屋や風俗店のまえで、ほどよく酔いの回ったサラリーマンたちが、煌びやかな金魚の群れのように着飾った女性たちに捉まっている。

そんななか、明らかに周りとは一線を画した、優美なる貴公子然とした存在が、雑踏の海を飄々と渡り歩いてくる。

彼の名は兎妃 綾人。

翡翠ヶ丘学園で、その名を知らぬ者はいない。その理由わけを挙げてみると、顕著なまでに彼の淫奔いんぽん振りが窺えた。

彼の素晴らしいルックスに対し、欠点を見つけるのは難しい。しいて言えば、その性格に難があるのだが、とは言えそれを凌駕するほどの美貌の持ち主である。

すらりと伸びた長い手足と、極めてバランスの取れたモデル並みの長躯。

少し癖のある、ふわり柔らかなトゥーヘアードの髪は、無造作ながらも綺麗なラインを描きながらすっきりと纏まっている。

流れる柳眉と、豊な睫毛に縁取られた、淑やかなロイヤルブルーの瞳。すっと通った鼻梁の下には、悪戯いたずらを思いついた子供のように、口角の上がった口唇が鎮座する。

それらパーツを完璧に配置する小作りな顔は、男女を問わずに目を奪われてしまう、魔性の魅力がある。

彼の母はフランス人である。事業家の父が、仕事でフランスに赴いた砌に母と出逢い、綾人を身籠ったのである。

だが既に父には妻がおり、妊娠に気づくも父には其れを知らせることなく、母はひとり出産して綾人を育てたのだ。

せめてもの繋がりとして、父の名である「綾矢りょうや」の、綾の字と矢の字を分解し合せ、「綾人あやと」と母が名付けてくれたのである。因みにフランス名は「Youri―ユーリ―」という。

身寄りのない母は、近隣の助けを借りながら、綾人を育てるために睡眠もそこそこに朝晩と働いた。貧しくとも幸せなひと時であったのだ。母が元気なうちは・・・・・・。

元々身体が丈夫ではなかった母は、綾人が五歳のときに病に倒れた。

あっという間であった。人とは儚いものだと、幼いながらにして綾人は達観し、涙も母の棺のなかへとともに葬るのであった。

その後引き取り手のない綾人は、近隣のひとや生前母との交流のあった人に厄介になっていたのだが、日本人である父の所在を知ると「やはり肉親の許で暮らすのが一番」だと、世話になった母の知り合いにより父の許へと引き渡された。

今でも綾人は、体の良いお払い箱だと思っている。実際、人ひとりを養うのには金がかかる。みな其々、おのが生活で精いっぱいだったのだ。

父の許へと所在を置いてからの綾人は、それはもう憐憫れんびんなる扱いを受けることとなる。父の妻より、DNAでの親子鑑定を受けさせられたのちの綾人は、父の裏切りと母への怨恨を一挙に引き受けることとなった。

綾人に自身の居場所はない。父は綾人を慮り、己が愛した忘れ形見に無償の愛を注ぐが、その分だけ綾人は父の目の届かぬ場所で、義母により酷い罵りを受けた。

父には息子と娘がいる。綾人の五つ上で22歳の兄・慎矢しんや、二つ下で15歳の妹・雛歌ひなかである。

綾人が引き取られた当初より、兄は綾人に対して風当たりがきつかった。義母と同じくして綾人を侮蔑の目で見下し、蔑んだのである。

対する妹は、物心がつく頃より綾人に対し異様な程の執着を見せ、初等部高学年の砌には、綾人を異性の目で見るようになった。

身の置き場のなくなった綾人は、中等部の頃より家を空けることが多くなった。幼き頃よりひとりのときが多かった綾人は、幸か不幸か自立心と行動力に長けていたのである。

夜遊びを覚え、歓楽街をひとり当てもなく放浪していると、見目の整った綾人は直ぐに女性たちのお眼鏡に留まった。

これ幸いにして綾人は、自身のパーソナルスペースが皆無である。従って、気の向くまま声のかかるまま、女性たちの部屋を転々と舞い移るといった、爛れた生活を送ることとなる。

そんな生活も、既に二年―――



「あ~ 綾だ~♡ どこ行くの~?」

「ん? あ~ 鈴夏さんか、久しぶり。もう帰るとこだよ」

「え~! せっかく久々に逢ったのに、帰っちゃうとかひどくない? ねえ~ 遊ぼうよ~! ・・・・・・うち泊まってっていいからさ♡」

(どうしようかな・・・・・・でもたまには帰っとかないと、またに小言言われるし)

「ん~ ごめんね? もう今日は僕疲れちゃったから、帰って寝るよ。また遊ぼうね? ッ~♡」

そう言うと、綾人は鈴夏の口唇に口づけをひとつ落とし、婀娜やかな流し目でウインクをおくった。

「――――――ッ♡ あ、あや・・・・・・」

綾人の放つ、底なしのフェロモンに中てられ恍惚となった鈴夏は、ドライウォッカを一気に飲み干したが如く、全身を鮮やかに染め上げた。

うっとり佇む彼女に手を振り、踵を返して綾人は艶冶えんや孕む夜の帳のなか、帰途へと就いたのであった。


                ☆ ★ ☆


ピピピピピ・・・・・・

頭上より目覚まし時計の音が鳴る。

綾人は、昨夜――と言っても殆ど夜明け近くであったが――そっと家に戻ると、自身に与えられた部屋へと縺れるように飛び込んだ。

倒れるようにベッドに横になり、登校までの数時間仮眠を取った。目覚まし時計が起床の刻を告げるところを見ると、半ば意識が散漫するなかでもしっかりONにしてブラックアウトしたようだ。

モソモソと綾人は手を伸ばし、目覚まし時計を掴む。ベルの音を消し、時計を抱いたまま暫し夢現と放心する。

一時が過ぎ、徐にドアをノックする音が、綾人を微睡から覚醒へと促した。

(ん・・・・・・誰? ・・・・・・っていうか、僕の部屋ノックする物好きなんて、ひとりしかいないか)

まだ重い頭と身体をむっくと起こし、綾人がノックの元に返事をする。

「はい・・・・・・雛?」

綾人が声を掛けると、ドアの向こうから愛らしい、嬉々とした弾むような声が返って来る。

「綾くん♡ おはよう♪ 今朝は帰ってたんだね♡ 朝食の用意が出来てるよ?」

「あ―――うん、 ・・・・・・いいや。ごめん。おなか減ってないんだ」

朝から義母と対峙するのは、御免蒙りたい・・・・・・綾人は、心底辟易とした胸懐でそう言い零す。すると雛歌は、それを不調からくるものだと勘違いし、綾人の身体を慮り己の入室を乞う。

「大丈夫? お加減よくないのかな? ねえ、ドア開けていい?」

例え綾人がそれを拒んだところで、雛歌は大仰に騒ぎ立てて此れを大きくすることを、綾人は既に幾度も経験済みである。己の思い通りにならないことを良しとしない、甘やかされ育った結果が、今もドアの向かいで入室を望む雛歌である。

綾人が、諦念の境地で入室を許可する。

「・・・・・・いいよ。入ってきな」

嬉々として満足げな声とともに、雛歌が部屋のなかへと入ってくる。気だるそうにベッドに腰を下ろす綾人を認めた雛歌は、瞳を輝かせて彼の許へと歩み寄る。

「食欲がないの? 調子悪いならお医者さまに見てもらった方がいいんじゃない?―――・・・私服のままだね。また遅くまで女の人のところへ行ってたんでしょう! 夜遊びばっかりして、毎日家に帰ってこないし・・・・・・」

「ごめんね? 僕、こんなやつだからさ。雛が心配する必要はないんだよ? 僕は好きでやってるんだからさ。昨日も遅くまで遊んでて、寝たのが朝方だったから食欲ないだけだし。大丈夫、身体はどこも悪くない」

あるとすれば、それは僕の心―――――― 綾人は、心のなかでそう呟いた。

「ねえ綾くん。私ね、綾くんのこと好きなの知ってるでしょ? 私が綾くんに気持ちを伝えたんだから・・・・・・なぜ何もなかったことみたいに振る舞うの? 私のこと嫌い?」

「・・・・・・・・・・・・」

もう幾度と雛歌から伝えられた求愛の言葉。もう何年も彼女から同じ科白を贈られている綾人は、既に幾多もの峻拒しゅんきょの言葉を彼女に伝えてきた。

だが間を置かずに紡がれる、妹からの一方的な愛の告白に、困惑を通り越して最近は拒絶の意を唱えることすら、億劫となっている次第である。

いくら来る者拒まずのていであっても、さすがに血の繋がりのある者に手を出す趣味はない。辟易としたまま何も言わない綾人に対し、雛歌が綾人の心とからだを籠絡しようと試みる。彼の首に腕を回して顔を引き寄せ、発育の良い胸へと埋めた。

「私もう子供じゃないよ? 綾くん、私が子供だったから気持ちに応えてくれなかったんでしょ? なら確かめて? 綾くんが私の身体を調べたら、もう子供じゃないって分かる。 ・・・・・・綾くんが他の女の人にしてるみたいに、私のことも触って? 綾くんになら、私・・・なにをされてもいい」

なにをされても? ―――綾人のなかで、なにかが音を立てて崩れる気がした。

「なにされてもいいんだ? ほんとに? 僕が優しいとでも思ってるわけ? だとしたら、考えを改めたほうがいいよ? 雛。男相手に『なにされてもいい』なんて言っちゃうと、後悔するよ?」

でも雛は少し怖い思いしたほうがいいかもね―――綾人は雛歌に言い置くと、己の首に回されていた彼女の腕を鷲掴み、そのまま彼女をベッドへと押し倒した。

腕を一纏めにすると、彼女の頭上へと縫いとめた。

雛歌がびくりと肩を震わす。少なからず恐怖を感じたであろう、彼女の感情の起伏を一蹴した綾人は、尚も細い腕をぎりぎりと締め上げる。

無表情のまま雛歌を見下ろす綾人。温もりの感じられない、綾人の冷然とした瞳を目にした雛歌は、思わず顔を背けて視線を外した。

白く華奢な首筋が、綾人の眼前に露わとなる。彼女の腕を縫いとめたまま、綾人は艶めかしく剥き出された首筋に顔を埋めた。

「やッ・・・・・・ん・・・・・・ッ」

首筋に綾人の温もりと息遣いを感じ、ぞくりと肌を粟立たせる雛歌。綾人は首筋に舌を這わせ、尚も彼女の動揺を煽る。

きっちりと着込まれた、彼女の制服のリボンタイを片手でするりと解くと、綾人はそのなかにある彼女の胸の膨らみへと舌を這わせていった。

「あ・・・・・・あ、い・・・いや・・・・・・ッ」

恐怖しおもてを綾人から背けたまま、雛歌はぎゅっと瞑った双眸からぽろぽろと涙を流し、身体を強張らせて嗚咽を漏らした。

少しやりすぎたか? ―――綾人は、震える雛歌の涙に濡れる顔を見上げ、ここに来てやっとその瞳に色が差す。

まだ遣るかたのない苛立ちは拭えないでいるが、これで少しは彼女も大人しくなるであろう―――そう己のなかで納得した綾人は、制服の乱れを整えてやり、濡れた瞳をそっと指で拭ってやる。

優しく頬を撫で、後頭部へと手を差し込むと、己の胸のなかへと抱き起した。

胸のなかで涙を消化する彼女の背中を、労わるようにそっと撫でさすってやる綾人。徐々に平静を取り戻してきた雛歌に、綾人が優しい声音で語りかける。

「雛、怖かったろ? ごめんね? 怖がらせて。でもね、男のまえであんなこと言っちゃうと、どうなるかこれで分かったろ? 雛はまだ15歳なんだから、まだ急いで大人になんてならなくていいんだ。雛は雛らしく、僕の可愛い子でいて?」

まだ息が整わないのか、少し掠れた声で「ん・・・」と頷いた彼女を、ぎゅっと抱きしめてよしよしとあやしてやる。

だんだんと調子を取り戻してきたのか、「もう私は赤ちゃんじゃないのよ!」などと、いつもの軽口が彼女から紡がれる。

「僕にとっては、雛はいつまでも僕の可愛い赤ちゃんだよ♡」

ね? と、むくれ顔の雛歌にウインクを飛ばし、ご褒美の口づけを額に落としてやる。

「さあ、そろそろ義母さんが心配して来るね。じゃあ、ほら、ドレッシングルームで顔を洗っておいで。僕の可愛いウサギちゃんが台無しだよ? そしたらあとで、髪を整えてあげるからさ」

「うん♡ じゃあ綾くんも早く下りてきてね? 待ってるからね!」

「ふふ。はいはい」

そう言うと雛歌は綾人の腕から離れ、ドレッシングルームへと向かうべく廊下に消えて行った。綾人は、彼女の背中に向かって「いってらっしゃい」と手を振る。

「・・・・・・ふぅ・・・まったく。なにやってんだ・・・僕は・・・・・・」

いつも感情の突起など表に出さず、この家では己を無にしてやり過ごしてきた。冷静沈着は板につき、いっそのこと専売特許ではなかろうか? などと、自身を自虐ネタにすら思ってきたのに・・・・・・だ。

殊の外、己を大切にしない雛歌の粗末な科白に、綾人の心の琴線に激しく触れたのである。

自嘲混じりの大きなため息をついた綾人は、手のひらで顔を覆い、そのまま髪を掻き上げて立ち上がった。

登校まえにシャワーを浴びたい・・・・・・でもそのまえに雛歌の髪をしてやらなきゃ・・・・・・

綾人は、いつものように気持ちの切り替えが上手くいかず、少しばかりの狼狽えを覚えるも、それすら面倒で思考をシャットアウトしたのであった。


                ☆ ☆ ☆


いつもの屋上、いつもの光景~ 集まるメンバーもいつもの顔ぶれ―――?

ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・・・あれ? メンバーって五人て書いてあるけどなあ。なんだかひとり多い気もするけど・・・・・・ま・・・いっか。

既に専用スペースと化したこの場所で、いつもの顔ぶれである六人が、間の抜けた表情を惜しげもなく晒して、持参した弁当に舌鼓を打つこの時間―――

「「「「「「 誰が間抜けだ!! 」」」」」」

わあ!? ・・・・・・あの人の言ってた通りだ。結構つっ込むよね。ぼくビックリしちゃった~ てか笑える♪ なんだか興が乗ってきたっぽい感じ? ふふ♪

なになに? え~と、「綾人が咲夜に冷静なつっ込みを入れる」・・・・・・? なにそれ。

ん~と、じゃあ・・・・・・綾人が咲夜に冷静なつっ込みを入れる―――



「咲夜。ちょっと大地に絡みすぎなんじゃない? というより、ちょっとは場を弁えようよ。いくら付き合いだしたからってさ、所構わずイチャイチャとかって有り得なくない? 見せられてるこっちの身にもなってほしいよね」

「え~ 減るもんじゃないでしょ~ てか綾人くん、それってヤキモチですか?」

「僕のメンタルがすり減るんだけど。大地との絡みとか、それヤキモチというより胸焼けの領域だよね」

「あ!? おい! 綾人! どういう意味だよ、それ―――ッ!」

「ぶふぉッッツ―――!」

綾人の咲夜に対する返しに、ひとり憤慨する大地。その一連の流れのトラップに引っかかった哀れなき者が約一名。

タイミングよくお茶を啜っていた春が、含んだお茶を盛大に噴き出したのである。

「うわッ! ちょっとー!! 春くん汚ったなーいッ!! 僕の大地にかかったらどうするんですか~!」

そう言って、ここぞとばかりに咲夜は大地に抱きついた。大地は満更でもない顔で脂下がる。彼の手が、咲夜の引き締まった尻へと添えられたのは、気づかなかったふりをしておくこととする。

「ぐぅぉふぉッ! ぐぇふぇッ! ッ―――りぃー! ちょ、変なこと入ったんだって・・・・・・ッ」

春は咲夜に詫びの言葉を吐き、それでもまだ苦しそうにむせ込んでいる。

その様子をにこにこと満面の笑顔で窺いながら、チョコスプリンクルドーナツにかぶり付く、醸し出すほえほえ感の堪らない、我らがマスコットが一点である相馬 郁である。

彼は口の周りをチョコレートでいっぱいにし、にっぱりと笑んで春を野次る。しかし見ているだけでも甘ったるい、歯が浮くようなものをよく喰える・・・・・・

「ワンワン! 咆哮ほうこうが可愛くないよ~? もっとキャンキャン啼いて?」

「お、お俺は犬じゃね―――ッ! ぐぇふぇッ」

「ん~ てか、やっぱり春は犬っぽいよね?」

「んだとッ―――!!!」

郁にも綾人にも犬扱いされた春は、力の限り咆哮した。

例に漏れず、七瀬は重箱の端を突きながらニヤリとしていたのであった。


                ☆ ☆ ★


綾人は生徒会の、文化委員会の役員として、その身を置いている。とは言え、学園行事のない今の時期、綾人は気楽なものである。

我が校の校訓として、翡翠ヶ丘の生徒は部活動に従事しなければならない。気概が低速な綾人にとって、なんとも厄介極まりのない校訓ではあったが、入学した以上は綾人も何かしらと部に籍を置かねばならなかった――世間体から義母により入学されられた――。

そこで綾人は考えた。いかに楽ができ、尚且つ己のプライベートタイムを削らなくても良い部を。

中等部の頃より、綾人は男女問わず人タラシであった。そんな彼が独自のコネクションを駆使し、生徒会長を懐柔したうえで、己に最も都合の良い待遇を手に入れたという訳なのだ。

おかげで、普段は専らの幽霊部員と徹している綾人である。

ただひとつ、綾人にもどうにもならないことがある。否、と言った方が正しいか。

其れは誰を指すのかと問えば、綾人は即座にこう答えるであろう、「副会長の桜庭さくらば葉月はづき」だと。

自身にとっての面倒事や足枷材料は、如何様にもすべからく此れを躱す綾人ではあるが、ことに副会長の桜庭だけは綾人にも思い通りいかない。綾人にとってのダークホース。最重要、要注意人物である。

今日も放課後に運悪く桜庭に捉まり、生徒会室には出向しないのかと釘を刺された。それもまた、言いようである。綾人が彼に対し苦手意識を持つのは、なにも責務に厳しいからだけではないのだ。最も綾人の癇に障るのは、副会長の人を食った物言いにある。

「これはこれは、兎妃文化委員殿。本日生徒会への臨席は望めないのかな? きみの席はいつも開けてあるからね? でももう長らく放置しているから、埃が積もってきているよ―――」

である。

「いつもながらの桜庭副会長の皮肉節は健在ですね!」と、息継ぎもせず捲し立ててやりたいのは山々ではあるが、如何せんあれでも副会長であり、しかも先輩である。太いパイプで構成された、縦社会でもある男子校だ。あらぬ波風を立てて、自ら居心地を悪くするのは得策ではない。

そう自身に言い聞かせ、なんとか今日も体よく乗り切った綾人であった。



ふうさん、同じのもう一杯くれる?」

「は~い♡ すぐ用意するから待ってね♡」

「ありがとう。風さんは優しいね♪」

「あらぁ~♡ それは綾人くんにだけよぉ~♡」

綾人にベタ甘な声音で科白を紡ぐのは、風さんこと「風見かざみ 茂雄しげお、43歳・♂」。科を作ってはいるが、紛れもなく立派な体躯をした成人男性である。

ボディービルダーも唸る程に隆起した筋肉は、同じ男として憧憬の念すら懐くほどであった。

がこの翡翠ヶ丘の不夜城で「Bar・Silpheed―バー・シルフィード―」を開いて5年。綾人は風見がこの店を開いて以来の付き合いになる。

いつも飄然とした綾人は、当初中等部1年の13歳であったにも関わらず、その風体はこの終宵の街に大差なく溶け込んでいた。よって風見は半年もの間、綾人のことをなどと、微塵と思いもよらなかったのである。

事実を知ったが、はじめて垣間見せた「男」の部分を、綾人は生涯決して忘れ得ぬだろう。―――風さんをいけない―――同時に、綾人が固く心に誓った瞬間でもあった。

「おまたせ~♡ コレ~ わたしからのサービスよ~ん♡」

「ありがとう♪ 風さん。うれしいな♪」

風見の愛のサービスである、ダイスカットのパルミジャーノとクラッシュプレッツェルが、綾人のまえに置かれる。

綾人の注文したズブロッカが注がれたロックグラスには、氷彫刻家顔負けに施された、完璧なまでのハート形のロックアイスが、からりと小気味の良い音を立てながらその存在を主張している。

「・・・・・・すごいよね、ほんと。風さんの愛をビシビシ感じるよ」

「でしょ♡ でしょ♡ うふふ~~~♡」

すこぶる見事な肉体美を惜しげもなく晒した外見と、女性が舌を巻く程に女らしい口調と内面とが融合した結果、風さんこと「風見 茂雄」が誕生する。

その意外すぎるキャラ性と、威風堂々とした風見の豪胆さが、アンニュイであった綾人の心の渇きを癒してくれる。綾人にとって、風見は心のサプリメントなのだ。彼女の経営するこのバーは、綾人の密かな隠れ家でもある。

「それで? 今日はいったいどうしたの? なにかあった?」

「なにかって? ・・・・・・あったように見える?」

「ふふふ。もう何年の付き合いになると思ってんのよ♪ 綾のことなら、下着の色も女の好みも把握済みよ!」

「色って・・・・・・まさか! あはは~ ―――・・・って、まじで?」

「わたしに隠し事はなしって言ってんの! 白状なさい!」

思わず「千里眼ですか!」と白状しそうになったが、ぎりぎりでそれを飲み込んだ。

このママ――マスターと呼ぶと怒り狂うのだ――は、海坊主のような外見とは裏腹に、非常にナイーブなうえに勘が鋭いのである。

これまでに、綾人は風見に秘密を持ったことはない。彼女は綾人にとって、気の置けない存在であり、よき理解者でもあるのだ。ともすればツーカーの仲と言えなくもないが、どちらかと言えば「兄貴分」的な立ち位置に近い。

自身の生い立ちや境涯は、包みなく彼女に話してある。

義母や兄の己を見る目、妹の異常な程の執着。唯一、綾人が信頼し、悩みや愚痴を吐露出来る相手だ。ギブアンドテイクは当然のことである。

放課後、帰宅した綾人は私服に着替えると、いつものように義母や雛歌の目を掻い潜り家を抜け出した。父と兄は帰宅が遅く、鉢合わせすることは少ない。

出題された課題分は、既に授業中に済ませており、家にいてもやることがない。

それに今日の今日で雛歌と対峙したくなかった綾人は、数日分の着替えと制服をスポーツバッグに詰め込み、己を飼ってくれる女性たちの帳翠すいちょうにしけ込むつもりで家を出たのだ。

スポーツバッグは駅のコインロッカーに預けてきたので、数日間のエスケープを風見に悟られるはずはないのだが・・・・・・ポーカーフェイスを貼り付けていても、風見には綾人の僅かな機微きびでさえ、お見通しであったということだ。

暫し思案の刹那、綾人の心に重く侵食する存在―――雛歌のことを訥々と話す。

「今朝ね、とうとう雛歌が一線越えてきちゃった。で、僕も・・・・・・キレちゃったんだよね」

「キレたって・・・・・・ まさか、あんた! 妹に手を出し―――」

「さいごまではってない。というより、ちょっとお仕置きをしただけ。僕に色目使ってきたからね。それに、雛の言った言葉が許せなかったんだ」

「あ~ びっくりしたわ! それで? 妹ちゃん、なんて言ってきたの?」

「僕に『なにされてもいい』って」

「ありゃりゃ~ 今どきの中学生ってマセてんのねぇ~」

「それ僕見て言う? まあ、マセてる云々は置いといて。雛は僕を好きって言うけど、それってさ、刷り込みなんだよね」

「刷り込み?」

「うん。そう。物心ついた頃から僕ら一緒に育ったけど、血は繋がっててもそれは半分だけで、外見も話す言葉も違ったからね。絵本に出てくる王子さまみたいな、ある意味雛は僕のことを偶像的な存在として認識したんだと思う」

「綾は妹ちゃんにとって、絵本のなかから飛び出してきた王子さまってわけね。で、それを今もずるずると引きずっていると・・・・・・」

「そう」

5歳だった綾人が兎妃家に引き取られたとき、雛歌は3歳であった。

物心がつき、様々のものに興味をそそられる砌。父や母、兄や友、それに鏡に映る自身も黒髪に黒眼が通常であるのに対し、雛歌にとって綾人は通常ではなかった。

美しい銀髪と碧眼を持った男の子―――雛歌にとって、綾人は正しく絵本のなかの王子さまそのものであった。幼い心に憧れと恋を混同するのも無理はない。

「恋に恋する、か・・・・・・う~ん、難しいわねぇ~ 乙女心は複雑だから~」

「・・・・・・・・・・・・」

「風ちゃんは乙女心が分かるの?」と、喉もとまで出かかったが、綾人はそれをなんとか飲み込んだ。

「でもねぇ~ 恋心ってやつは複雑だから~ 妹ちゃんの刷り込みが、今もだとは限らないでしょ? もしかすると、本当に綾のこと女として愛しちゃってるかも―――だし」

「だとしても、僕は雛の気持ちには応えてあげられないし。だいたい僕は、恋心自体が分からないよ」

「あら、やだ! 冷たい男ねー! でも、そんな綾も素敵―――ッ♡ ・・・って、今なんてった!? 恋心が分かんないって!?」

「うん。そう言ったよ。僕、恋したことないから」

「そんなバ~ナ~ナ~~~♪ ―――って、うっそでしょ~~~!!? あんた、あんだけ男女問わず取っ替え引っ替えしといて!?」

「・・・・・・ちょっと、僕を見境のないケダモノみたいに言わないでほしいんだけど。けど、そうだね。うん。したことない。恋は」

「なに言ってんのかしら~~~ こん子~は~~~」

綾人の科白に呆れながら、大仰な訛り口調で風見は天を仰ぎ見る。とりあえず、ついてゆけないテンションの高さには、触れないでおいたほうが良さそうだ。

程よく溶けたロックアイスと度数の高い液体とが、グラスのなかで絡んでゆくのを、ただじっと眺める綾人。

風見は、綾人が見つめるロックグラスを取り上げ、グラスが掻いた水滴をナフキンで拭ってやりながら言う。

「あのさ、わたしも恋愛経験が豊富ってわけじゃないから、綾にそんなかっこいいこと言ってあげられないけどさ・・・・・・綾はさ、今は心が故障してるのよ。幼い頃から辛い目に遭って、母親から受けるはずだった無辜むこの愛情も受けられなかった。だから、心が壊れちゃうまえに、綾は自分で自分の心を故障させちゃったのよ」

そこで一旦言葉を切った風見は、己もグラスにズブロッカを注ぎ、一気に其れを煽った。綾人はなにも言わず、彼女の二の句を待つ。

「綾くん。ひとの心ってね、そんな軟じゃないの。そりゃ、傷ついたら落ち込むし、すっごく痛い。でもね、時間はかかっても傷は癒えるわ。絶対に。綾人にもきっと心を癒してくれる人が現れるはずよ? 保障するわ。そうしたら、心の故障は修理されて新品になっちゃうから!」

「そういうもの?」

「そういうもの♪ 断言したげる! お姉さんを信用しなさい♪」

「・・・・・・うん、わかった。待ってみるよ。 ・・・いつか僕にも、そんな子現れるのかな」

綾人は、「お姉さん」という風見の科白は華麗にスルーし、風見の科白の主旨だけを有り難く甘受した。

「もちろんよ! 誰にだって幸せは訪れるのよ? ほら! シンデレラみたいに♡

きっと綾にも運命の相手は現れるわよ♡」

「僕、男なんだけど。 ・・・・・・でも、そっか。あの話も、はじめは継母と姉妹に虐められて―――って感じだったよね。サンドリヨン・・・・・・やたら親近感を感じるんだけど」

「そうそう♡ いびられて、折檻せっかんされて。それでも健気なシンデレラは、魔女の魔法でプリンセスに~♡ あ~ん♡ 女の夢ね~♡」

「どこに女が?」という科白は、口が裂けても言ってはいけないと、綾人は己を厳しく律した。

「それでもってねぇ~ シンデレラはガラスの靴が恋のキューピットになって、王子と結ばれるのよ~♡ だからねぇ、綾にもガラスの靴を見つけてくれるひとが現れるって話よ♪ ねッ! 分かった? 分かったら呑むわよぉ―――ッ!!」

両手を組んで顎に当て、科を作りながらクネクネとひとりロマンスに耽っていた風見だったが、最後に来てグラスを掲げ野太い声で締めの言葉をシャウトした。

周りのゲストが生温かく見守るなか、綾人と風見はグラスを合わせて乾杯をする。それに倣い、ゲストたちもグラスを掲げて音頭を取った。



カランカラン―――

「いらっしゃ~い♡」

ドアのカウベルが、来客を知らせる。

風見がカウンターから客に手を振りながら、来店を歓迎している。

夜の街はまだ宵の口で、客足もこれからが本番である。「Bar・Silpheed」も多分に漏れず、開店後数時間の客入りは鷹揚としていてる。

そんな落ち着いた時間帯の店内が、綾人は取り分け気に入っているのだが―――

「そろそろ客足が増える頃か? 引き上げるとするか」そう考えていると、エントランス近くがやけに賑やかなことに気づいた綾人は、何気に声の方に目をやった。

「!? !? !?」

綾人は仰天し、驚きのあまり固まってしまった。

「まあ~~~♡ 素敵ッ♡ イケメン大歓迎~~~♡」

風見はすこぶる乙女モードを炸裂させ、ヒートアップの大興奮である。どうやらゲストは一見いちげんのようだ。

千客万来の水を売る仕事にとって、新客はオーナーが最も緊張し、尚且つ慣れ親しんでもらえるよう尽力を尽くす、腕と才気の見せ所でもある。

だが、カウンター内をスキップでもする勢いで、ゲストの容姿を諸手を振って褒め称え歓迎するオーナーに、緊張のきの字もなかった。

先ほどの賑やかな声は、エントランス横のボックス席でカクテルを楽しむ、キャバクラ嬢たちだったようだ。彼女たちは、出勤まえに風見のバーで景気づけをしていく常連である。だが彼女たちの真の目的は、たまに顔を出す綾人の美貌を拝むことであるのは言うまでもない。

そんな彼女たちが、綾人以外に甘い嬌声をあげる相手―――

年は十代後半、すらりと伸びた体躯は綾人よりも若干低めの175cm程だろうか。

艶を帯びたさらさらの黒髪、すべてを見通す黒瑪瑙の瞳。

意志の強そうな眉と気品のある鼻梁。肉感的な口唇は、蠱惑的に異性の視線を集めてしまう魅力がある。しっかり削げた頬と男らしい顎のライン。

細身ではあるが、身体作りを欠かしていないであろうことは、引き締まったウエストやカットソーからすらりと伸びた腕の筋肉から窺えた。

シルバーフレームの眼鏡を指で押し上げる様は、十代ながらにして美丈夫然とした風体である。

オフィスのビジネスマンと見紛う程の、エリートのような彼が綾人を認めると、長いストライドで迷いなく綾人の方へと歩みを進める。

綾人のまえで止まった彼は、綾人の隣の席に泰然と腰を下ろした。

「まあ~♡ ほ~んとハンサムねぇ~♡ 思わず見惚れちゃったわ~♡ って、わたしったら仕事ほっぽって! いらっしゃい♡ 当店は初めてよね? わたしはママの風見です♡ 風~ちゃん! って呼んでね♪」

「はじめまして。俺は『桜庭 葉月』といいます。ぜひ葉月と呼んでください。風ちゃん」

「いや~んッ♡ 声もなんてセクシーなのかしらぁ~ん♡♡♡ ねえ? 綾くん♪ ・・・・・・ん? 綾? どうしたの?」

「――――――ッ」

「ははは。どうしたんだ? 綾人。そんなに驚くことか?」

「あら? 葉月くん、綾のお知り合い?」

「はい。綾人とは、翡翠ヶ丘学園でともに生徒会に就いてます。俺が綾人より一年先輩ですが、序列など関係のない同士だと思っています」

「まあ~ そう~♪ 綾にこ~んな素敵な友人がいるなんて! 綾ったらちっとも学校のこととか話してくれないんだから~! ねえ! ねえ! もっと教えて?」

「ええ、いいですよ。では先ず綾人の友人関係から―――」

「―――風さん! さきにオーダー取ったほうがいいんじゃない?」

「! びっくりしたッ! 綾のそんな大きな声はじめて聞いたわ。 っと、そうね、ごめんなさ~い。まだ何もお出ししてないんだったわ! 綾のお友達って聞いて、わたし嬉しくて興奮しちゃった~! お詫びにはじめの一杯おごる! なに飲む?」

「じゃあ、彼と同じものを」

「ズブロッカね。了解~♡」

オーダーを受けた風見が、一旦その場を離れる。

綾人は嘆息し、一度息を整えたあと、桜庭の方へと向きを変えて対峙した。

桜庭は、頬杖をつきながら綾人を余裕綽々と見やり、綾人の出方を怡然いぜんと待ちうける。

「・・・・・・先輩、どうしてここへ? なぜ僕がここにいることを?」

「俺は生徒会メンバーの動向はすべて把握している。とりわけ、綾人に関しては特に詳しいぞ?」

「うわ~ なんだかそれ、かなり怖い発言なんですけど。でも、なぜ僕を?」

「どうしてファーストネームの呼び捨てなんですか?」という科白は、とりあえず言わないでおいた。

「それは俺が綾人に興味があるからだ」

「え? ・・・・・・興味―――」

「は~い♡ お待ちど~♡」

桜庭に対する綾人の疑問符は、風見の登場によってかき消されてしまった―――


                ☆ ☆ ☆


―――のであった。

・・・・・・わ~ 葉月くん出ちゃうんだ~ な~んか意外~!

葉月くんって小陽菜くんのこと―――

作者「わ―――ッ! スト―――ップ!! それ言っちゃダメ―――ッ!!!」

優月「・・・・・・どこから湧いて出てきたの?」

作者「ひとを蚊や蠅みたいに言わないでよッ! ってか、詩音くん、放送禁止用語入ってるから!」

優月「放送禁止? それって小陽―――」

作者「わ―――ッ!!!」

優月「うるさいなあ~ もう。わかったよ。でも葉月くんが僕の同期で、クラスメイトだってことは言ってもいいんでしょ?」

作者「ん~ まあ、それぐらいなら。 ・・・・・・でも、詩音くんはナビゲーターなんだから、オブザーバーに徹してよ? いい?」

優月「はいはい! わかった! わかった! (ったく、小姑かよ)」

作者「ん? なんか言った?」

優月「いいえ。 じゃあ、もう締めるね?」

作者「ほーい! よろしくー♪」

「兎妃 綾人の恋・上」、ここまでお読みいただきまして、まことにありがとうございます。

この続きはどうなるんでしょうか? 綾人くんの途切れたセリフの続きは? 葉月くんの興味とは? 風ちゃんの頭部は店内ライトで後光が差しているのか??

・・・・・・続きは、「兎妃 綾人の恋・中」でご確認のほどを。

それでは、またお会いする日まで、さよなら。さよなら。さよなら―――

作者「―――って! 詩音くん、それ古いよぅ~~~!!」

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