ハローグッバイおやすみ世界

かみなしのかなしみ

第1話

 最近どうもよく眠る。少なくともここゴールデンウィークの間に著しく眠るようになった。もともと睡眠時間は多いほうだったのだが、今回の大型連休により、さらに僕の睡眠時間は増え、最終日である今日、僕は十六時間も睡眠に費やしてしまった。明日から学校が始まるというのに、ここで体内時計を戻さなければ、ともう一度布団に入ってみる。どうせ、目をつむったまま眠りにつくことなく朝を迎え、眠いのか眠くないのかハッキリしない状態で、学校に行くことになるのだろうなぁ、と思ってはいたのだが、存外にも僕は気を失うようにして深い眠りについてしまった。

 目覚めると、僕は大学の講堂で授業を受けていた。ベッドで目を覚まさなければ行動の辻褄が合わない、これは一体どういうことなのだろう、と考えるべきなのだが、僕はそういった疑問を持つこともなく、数時間前からそこにいたかのように僕は冷静だったし、平常な振る舞いをしていた。講堂のスクリーンには、「アートでまちおこし」が如何に重要かみたいなことが実にくだならく講義されていた。十時五十分か、そういえば昨日から何も食べていなかったな、と思い出したから、とりあえず講堂を出てみる。校舎全体がいつもより綺麗だった、というか地方の郊外にでかでかとそびえ立つショッピングモールみたいに楽しそうな雰囲気があった。もはや校舎ではない。ジャスコだ。だのに、煙草に火をつけて今日も良い天気だなぁ、なんて呑気なことを言って煙をはいた。遠くから、おーい、ショウ何やってんだよぉ、とこちら側へやってきたのは友達と彼女だった。僕はおー!おー!と、嬉しそうに手招きした。煙草一本分けてくれよ、ごめん今ちょうど切れた、いいよもってるから、それ吸い終わったらとりあえず飯でも行かない?えーコンビニでいいじゃん。僕らはいつもの会話をいつも通りに交わした。 それと同時にでも何かこう、やっぱり何かが違うなぁ、という気もしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハローグッバイおやすみ世界 かみなしのかなしみ @ClioneDeadMelt

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る