第5話 断片の物語
「ねえ、夢。知ってる? あの幽霊の話」
ニヤニヤ顔を隠そうともしない友人の
「だからさあ、幽霊の話。知らないの? いま、すっごくホットな話題なのに!」
幽霊の話にホットはないだろうとわたしは思わず苦笑いを浮かべる。
この娘は体が小さくて気が弱い癖に怪談が大好きなのだ。
凛花は続ける。
「実はさあ、うちのガッコの正門で見たって子がいるらしいんだよ。なんかね、めっちゃ髪の長い小学生ぐらいの女の子が俯いてずっと立ってるらしいんだよぉ。
でね、その子に声をかけるとすうって煙みたいに消えちゃうんだって」
なにそれ、くだらない。
わたしは正直こういう与太話の類を信じない。
だって、馬鹿げてるでしょう?
存在しないものをあたかも存在すると断言する奴は精神を病んだ手合いか詐欺師ぐらいのものだ。
まあ、冗談ならば話は別だが、わたしの友人は本当に真に受けているらしい。
それもこれもすべては心霊カウンセラーを自称する阿呆どものせいだ。
悪魔の証明を可能にしたその手腕はたいしたものだが、どうか他所でやってもらいたいものだ。
例えば、黄色い救急車に乗せられていった果てにたどり着く白塗りの病棟とかで。
「でね、まだ続きがあるんだけど………」
なんだ、まだ続くのか。
わたしはさっき買ったばかりの缶コーヒーを開けながら凛花の話に耳を傾ける。
「消える瞬間に『あなたじゃない』って言うんだって。めっちゃ怖いよね。それって誰かを探してるってことじゃん」
ああ、やっぱりあほらしい―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます