第3話 途中の物語

 心霊カウンセラーという職業をご存知だろうか?

 この世に未練を残し旅立つことができずにいる哀れな魂を救済する誇り高きかの職業のことを。


 僕はそれの成り損ないだ。


 霊視はできるが、幽霊と会話し、この世の未練を晴らしてやることがついぞできなかった。


 だから、僕には学校の校門で一人佇むあの少女を救うことはできない。

 心霊カウンセラーの絶対数があまりにも少なくなってきている近年では尚更だ。

 そして、この区域でただ一人の霊媒体質者は僕ときているのだから厄介だ。

 彼女は救われない。

 僕には何も―――


「あんたはそんなんだから何時まで経っても半人前なのよ」


 誰かが耳元でそう囁いた―――ような気がした。


 周りを見渡しても誰もいない。

 

 その事実にうんざりして溜息を吐きながら校門を通る。

 そのとき、彼女と視線が交わった気がした。


 

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