第2話 題名のない物語
私には、名乗るべき名前がない。
この世に生を受けた瞬間に誰もが与えられるであろう記号を私は持たない。
それゆえに私は他人から認知されることなく存在してきた。
親にすら認知されることのなかった―――というか、自らの記憶を持たない―――私は何故いまもこうして自らが存在しているのか未だに理解できない。
認知されることがないということは、世話をして貰えないということであり、自分の面倒を見ることが出来ない赤ん坊にとってそれは死に直結することではなかろうか?
でも、私はこうして存在している。
それが私には不思議でならない。
「ねえ、どうして私は存在しているのかな?」
通りかかった男の子に声を掛けるが、答えは帰ってこない。
予想したとおりだ。
ねえ、どうして―――
その問いに答えてくれた人物はいまのところ誰一人としていない。
別に構わない。
だってもうすぐ私を捨てた
記憶がなくったって直感でそれぐらいわかる。
あのひとはここにいる。
「きみ、どうしたの? こんなところに突っ立てさ」
見知らぬ女が私に声を掛けてきた。
違う。
私の逢いたいひとはあなたじゃないの。
「あなたじゃない」
私は冷たく、そう言い放った―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます