絶望少女のドールシアター7

「どういうことなの?」


 すみれちゃんは理解出来ないとばかりにうろたえていました。


「まずここはすみれちゃんの妄想世界ではありません。すみれちゃんは妄想世界に巻き込まれて、そこからさらに妄想として私を作りあげケイを作りあげた。私にケイという友達は要らない事を証明するために」


 結局メグも私も巻き込めていないので、ただの人形劇でしかありませんけどね。


「最初私も本物の私だと思っていましたが、いくつかの妄想世界のルールで私は偽物だと判断しました。まず一つは私がこの世界でイマジンが使えないことです」


 これに気付くのはかなり遅れましたね。


 まず最初に美春さんからのメッセージでイマジンの存在を知ってしまったのが最大の誤算でしょう。すみれちゃんは私がイマジン持ちだと言う事を知らないので、そんな設定で私を作るはずがありません。しかし美春さんが私にイマジンの存在を教えることによってイマジンの存在を知る私に変質してしまいました。


 最初にキャロを引き当てたのを自分のイマジンだと思ってしまったのもミスでした。これはすみれちゃんが私の使うキャラはキャロ! その先入観によって作り出されたのでしょう。


 この世界においては私よりもすみれちゃんの方が影響力が大きいみたいです。

妄想世界に巻き込まれた人間の妄想と妄想から生まれたNPCで扱いが違うのは当然でしょう。


「いまじん?」

「今いる妄想世界を意図的に作る能力と思ってください。帰ってきたら本物の私が面倒くさがりながら教えてくれるはずです」


 と言うかそれぐらいしてください。どうせ私に丸投げしようとしたんでしょうから。


 たぶん本物の私はこんな事でも言ったのでしょう。


『イマジンの私がいるならイマジンの私が解決するはずですよ。問題が大きくなる前に対処するタイプですので心配無用です。すみれちゃんの妄想で生まれた私ですと、イマジンが使えない可能性が高そうですけど、愛とか友情とかそう言う不思議パワーでどうにかしてくれるはずです』


 私は言う。絶対そういうこと言う。そういうこと言って無いとこの状況は絶対にあり得ません。


 ゲームマスターが本物の私と言う可能性はほぼゼロでしょう

 こんな面倒なこと絶対にしません。私が保証します。

 

 そんな話を聞いた美春さんが私にイマジンと言う単語を教えて、イマジン知識を私に植え付けてくれたはずです。


 おかげでイマジン知識はあるのにイマジンは使えない可愛そうな子が誕生しました。やさしさが痛みます。


「だからここに居ても大杉みのりはここに居ません。すみれちゃんが考えた理想のみのりちゃんでもありません。ここはただただ寂しいだけの世界です。帰りましょう」


 もっともエターナルマジックのメインストーリーをクリアしたとして帰れる保証はありませんが。


「だったらこの世界にいないと駄目じゃ無い! みのりちゃんこの世界と一緒に消えちゃうんでしょ」


「自殺願望ありまくりな人間にその説得は無駄です!」


 ゲームの世界と共に滅び行く私……こんなロマンチックな死に方素敵すぎる上にあんまり痛く無さそうですね。むしろなぜ今まで思いつかなかったのでしょか? 早く思いついてやるべきでしたね。本物の私は。


 これぐらい役得として貰っても良いでしょう。


「それに本物みのりちゃんは現実世界にいますから私の事は心配しなくても大丈夫です。本物のみのりちゃんも私の事などさほど気にしていないでしょう」


 大杉みのり自体がイマジンですからね。イマジンのイマジンとか劣化コピーも良いところです。


「とりあえずエターナルマジックの最終クエストをクリアしましょう。すみれちゃんがエターナルマジックで元の世界の帰還を望めば帰れるはずです」

「うん……」

「本物の私にはゲーム世界と共に死ぬのはロマンチックでしたと伝えてください。あと美春さんの紹介もして貰ってください。計画高校の優等生で優しい方です。すみれちゃんとも相性が良いと思います。私にだって不良じゃ無い友達がいることを解って欲しいですから」


 これぐらいしか復讐出来ないのが本当に残念です。


「じゃあクエストクリアしてエタマジ世界ともおさらばしましょう。エタマジしたくなったらまた放課後遊べば良いんですから」

「うん……」


 そして私たちは中ボスラッシュを箒と本の物理で殴り殺し。


 アレイスターに瞬殺されました。

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