絶望少女のドールシアター6
睡眠場所は馬小屋でした。イマジンでベッドに変えようとしたら無理でした。……ワラだけでも人間って熟睡出来る物ですね。
ゲームマスターさんはけっこうなRPGゲーマーの可能性がありますね。少なくともエタマジの設定資料には無かったので、ゲームマスターの妄想範囲の部分と考えるのが妥当でしょう。
今日も楽しく(と自分に言い聞かせないとやる気のなくなる)クエストをこなしていきましょう。
酒場に入り、初心者向けのクエストを選択している時でした。
「私もパーティに加えてくれるかしら」
声の方を見ると新キャラのシャハラがいました。
その子は最近エタマジに追加されたキャラでした。チートすれすれの強さで返金しろ詫び石よこせと言われまくったキャラですがゲームシステムの方に修正が入り、若干弱くなったキャラでもあります。
まぁ詫び石も貰いましたけど。
元ネタは千夜一夜のシャハラザード。最強のアシストキャラです。状態異常無視の相手すら状態異常にするキチガイっぷりでした。まぁ弱体化されてもキチガイ扱いされる可愛そうな子でもあります。
そんなシャハラ様なぜかレベル1
あと白い衣装と褐色の肌が相まってとってもエロティック。まぁ好みじゃ無いのでパスです。
「私はキャロです。貴方は?」
「シャハラと申します」
「俺、ケイ」
ケイのキャラだけ雑じゃありませんゲームマスターさん。
「是非一緒に冒険してエターナルマジックを探しましょう」
シャハラ様が誰か何となく解りますし、とりあえずここは思惑に乗っておくことにしましょう。
シャハラ様が加わり劇的に戦力アップ!ただしやることはゴーレム退治。シャハラ様が本でぶん殴ってもダメージ四桁、ゴーレムが岩じゃなくて泥人形のレベルです!
エタマジはストーリーだけなら無課金でも余裕でクリアできるんですよね……
そしてリセマラランキング上位が二人もいればストーリーなどすぐにクリアできます。
トントン拍子にモンスターを屠殺していきます。
もう私も面倒なので箒でボッコボコのギッタンギッタン。シャハラ様も魔法がちょっと欲しい場面ですら、物理最強と言わんがばかりに本でドラゴンを殴り殺していきます。
二日目にして酒場で私たちの名を知らない物はいませんでした。箒遣い(ランサー)のキャロ。本遣い(ブックメーカー)のシャハラ、あとおまけのケイ。
ケイの扱いだけ本当に雑すぎませんが。ゲームマスター様
「二人ともすげーな! 俺なんか足下にも及ばないぜ」
「いえいえ三人で一人のパーティですよ。ケイさんも卑下にならないでください」
とシャハラ様。暗黒微笑という黒歴史な表現がとってもお似合いな表情をしていました。
そこからも特に問題にならない快進撃を続けていきます。本と箒は殴る物! 大剣二刀流など不要!
長い冒険の旅(三日目)メインストーリーの最終クエスト。エターナルマジックのクエストに入ります。
本物のエタマジですとエタマジの魔法はその魔法を守っていた守護者大魔道士アレイスターとの直接対決。エタマジはその戦いで死んだ仲間の蘇生に使って終わり、他のエターナルマジックを探すた旅にまた冒険者達は出かけていく。
ついでに一度も死んで無くても蘇生に使われます。クエスト失敗して全員死亡しても特にペナルティ無しで町に戻ります。
陳腐なストーリーな上にご都合主義ですね。
まぁエタマジが人気の理由は、可愛いキャラとのサイドイベントと、本編より長いサイドストーリーなのでメインなどおまけです。
そう言うわけで大魔道士様にも箒と本(もちろん物理)で死んで貰いましょう!
最終クエストを早速始めます。永久の洞窟と呼ばれる特別なダンジョンに特別なBGMラスボス感バリバリです。
小手調べとばかりに今までの中ボスキャラが大量に出現します。
もちろん箒と本で……
と思ったらシャハラ様がご乱心、ケイを殴り殺しました。ダメージなんと5桁。いや、レベル全然上がってなかったと言っても魔法職相手に5桁は無いですよ。
「シャハラさんどうしたんですか?」
中ボスを箒で殴り殺したのでとりあえず聞いてみました。まぁケイは町に戻れば復活するから後でいいですよね。
「ケイはみのりちゃんの友達に相応しくないと思ったので消えて貰いました」
「やっとみのりちゃんって呼んでくれましたね。すみれちゃん」
もはや推理と言うレベルではありません。シャハラはすみれちゃんがよく使うキャラですからね容姿も可愛いと言っていましたので、エタマジの妄想世界なら間違い無くすみれちゃんはシャハラで来ると踏んでいました。
「どうしてケイが私の友達に相応しく無いと思うんですか?」
と言うよりケイとすみれちゃんってほとんど面識無いんですよね。ケイはケイで、ケイの物まね止めようとしませんからね。さて私はケイって何回言えば良いんでしょう?
「あんな金髪に染めるようなの不良に決まっています!! みのりちゃんはそんな不良になっちゃいけません!」
母親みたいな事言い始めましたよすみれちゃん。
「すみれちゃんがケイの事を詳しく知らないだけでとっても良い子ですからね。ケイ」
「私だけが友達で何が不満なんですか!?」
いや、不満しかありませんよ? と言うか私けっこう友達(と呼ばれる人間の数あるいはlineの登録相手)の数だけは多いですからね。人間の荒波を乗りこなすために人脈作りだけは積極的でしたから。
でも、すみれちゃんはそのことを知らないのか。すみれちゃん元ぼっちですし、私は私ですみれちゃんに他の友達を紹介しなかったような気がします。
こんな面倒ごとになるなら友達グループに強引につっこんで、社会の荒波に揉まれて貰うべきでしたね。
大反省です。
「いや、友達は数とまでは言いませんが、他人から影響を受けて自分を変えていくのは楽しいですよ。それはすみれちゃんが一番ご存じだと思います」
「私は、一人じゃなければ良いの! みのりちゃんだけで良いの!」
そうですね。私もカエルちゃんだけ居ればいい気がします。意見が合うので良い友達になれそうです。
「それでケイを殺したんですね」
「えぇ、それでこのクエストを永遠に続ければ私たちずっと二人ですよ。駄目ですか?」
私はすみれちゃんと友達になることで本当の友達になると言う壁を乗り越えたと思っていました。
すみれちゃんは私と本当の友達になることで壁を作りあげてしまったのでしょう。
コミュニケーションって難しいですね。ケダモノの咆哮みたいに感情むき出しの叫び声の方がもしかしたらうまく行くかも知れません。
あるいはスキャットを刻みながら踊るか。
「現実世界に戻りましょう」
「みのりちゃんは現実なんて嫌いって言ってたのに、どうして戻ろうとするんですか?」
まぁそうなりますよね……
あまり言いたい事では無いですし、あまり認めたくない事ですけれど言わないと先には進めないでしょう。
「私は大杉みのりではありません。すみれちゃんが生み出した大杉みのりの幻想です」
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