絶望少女のドールシアター

絶望少女のドールシアター1

「何やってんの?」


 私はこの初めての台詞に対してなんと喋ればいいか解っているし、どうすればいいか解っていました。


「み、みないでください」


 そうやって画面を隠さなければならないことも、そして画面を見て貰えて嬉しいと言う微妙な気持ちも完璧に理解しなければならないことも。


「エターナルマジックだろ。私もやってんだよ。ちょっと一緒に遊ぼうぜ」


 そう言うとケイはスマホを取り出した。

 私の知ってるケイとは微妙にデコの仕方が違っていました。あぁ私の知ってるケイってけっこう不器用だったんですね。こっちのスマホのデコり方の方が奇麗です。


 そろそろ私の方でも頭が混乱してきそうです。


 どこまでが妄想でどこまでが現実か、

 今の私ならどこまで言っても妄想です。くーそーしてから寝てくださいって気分です。

 私の握っているスマホはケイが持っているスマホとは種類が違って微妙に型落ちでした。デコられてもおらず、画面の傷つき防止のシールが貼ってあるだけのシンプルな物でした。


「あぁ私鬼瓦ケイって言うんだ。よろしくな。えーっと何だっけあんたの名前」

「相原恵です」


 それが私に与えられた役割であり、台詞です。まぁある意味原点回帰でしょうか? 私はケイが相原恵だった頃の自分をベースにして作っているのですから


「鬼瓦さんと呼んで宜しいですか?」


 台本通りの台詞ですが、私としてはこのままの方が解りやすいので是非ともそのまま了承して欲しいところです。


「いやケイって呼んで、私もメグって呼ぶ」


 その後私とケイはエタマジで遊びました。ついでにメグちゃんは始めたばかりなのかパーティが弱かったです。これだから無課金勢は……




 異常事態のスペシャリストになりかけている私はもう大体の状況を理解しました。

 これは妄想の世界です。レベル3を越えたレベル4と言った所でしょうか? そろそろこっちが現実になってもおかしくない感覚があります。


 まだ二回変身を残しているとか言い出さない事を願います。自称ラスボスちゃんがそろそろヤムチャポジションになりそうで本当に不憫です。


 私は今後何をすれば良いかノートにまとめていきます。もちろん授業中です。計画高校は地元で有名な進学校で東大入学者も普通にいます。

 そんな学校で私が学力でついていける訳ありません。どうせ妄想ですからね。授業とかマジどーでもいーしーってーか微積分とか何の役にたつってーの?


 と言うか私一年生だから微積分なんて範囲じゃないはずなんですけどね……進学校って凄い場所なんですね。


 凄いのは勉強の内容だけではありませんでした。

 宿題の量もドバーでした。もうグレてもいいでしょうか?


「めぐー!!」


 鬼瓦さんが私に近づいてきます。


「さっきの数学全然わかんねー教えてよ」

「だってまだ一年の秋ですよ。ケイはどうやってこの学校に入ったんですか? 勉強についていけないにしても早すぎですよ」


 止めて!自分で言ってるのに、自分の心がガリガリ削られていきます!


「だって家から一番近い高校がここだったから頑張っただけだしさぁ」

「だったらその時の頑張りをいつも続ければ大丈夫です。勉強もスポーツも一緒です。毎日の努力がそのまま実力になります」

「そこまで言うなら監督やマネージャーが必要なのも解ってるわよね。相原さん」


 美春さんが私たちに絡んできました。赤い縁のメガネがとても似合います。

 えぇ、私にも専属の監督やマネージャーを付けてください。と言うかこのままだと全然問題とけません。


「いやぁ、両手に花かぁ最高」

「馬鹿言ってると馬鹿になるわよ」

「所で、馬鹿ってどうしてバカって言うんだ」

「馬と鹿の違いもわからない奴のことを言うから馬鹿って言うのよ」

「美春様さすが為になりますなぁ」


 こうやって私たち三人は仲良くなったのでした。




 学生生活中に学生生活をエンジョイして何が楽しいでしょうか? どーせ誰が書いたシナリオなのかも解っていますので、私は好き勝手に動かせて貰います。

 学力が必要な時は口と手が全自動で動いてくれるみたいなので、授業中はサボリまくれるし悪くないのですが、それ以上に私にはやらなければならない事があります。

 放課後私はさっそく行動に移ります。


 そう小学生の観察です。


 まさかミカエルが本当に名前と言うわけ無いでしょう。シナリオライターの強制力が働かない内にカエルちゃんがどういう生活をしているのか把握しておきたい所です。


 一応言っておきますが、これは性的な感心があるとかそういうことではなくて、ここが妄想の世界だと言えどもカエルちゃんを助けられるのなら助けたいからです。そしてもっと懐いてください。


 カエルちゃんを助ける前に試しておかなければいけない事があります。

 イマジンがどの程度使えるかです。イマジンが使えないとなるとカエルちゃんと仲良くなる前に警察官と仲良くなる可能性が出てきます。


 いやぁ女に生まれてきて本当に良かった。

 とにかく、強烈な妄想内でどれほどのイマジンが使えるか私は試してみることにしました。


 まずは目的達成の為に幼女になれるか試してみました。


 意外にも簡単に幼女になれました。元の世界に戻ったら私で着せ替え人形ごっこ出来るように服を買い込むか真剣に悩みます。


 次に変身したのはクラゲでこれも簡単にできました。


 しかしキャロには変身できませんでした。

 もしも戦闘になった時にキャロに変身できないのはかなりの痛手ですね。今から別のエタマジのキャラ変身を覚えると言うのもあるのでしょうが、私としてはキャロが一番ですね。だってこの子が一番可愛いもん。


 変身出来ない理由は相原恵がエタマジを始めたばかりでキャロの存在を知らないからでしょう。時期を考えればすでにキャラとして出ているはずです。


 つまり相原恵が理解していない物に変身できるのは矛盾しているとシナリオライター様が言っておられるのでしょう。


 なら知っていればいいんですよね?


 私は相原恵のキャッシュカードをATMに突っ込んでみました。

 暗証番号? 指が勝手に入力しました。

 へへへ、たんまりあるじゃねぇか。思わずゲスな笑いが出てきました。


 出演料の前払いをいただくとしましょうか。私は躊躇せず10万円ほど引き出してそのままプリペイドカードを10万円分購入しました。


 こうして無事にキャロにも変身できるようになりました。

 いやぁ散財するのって最高に楽しいですね。結局20万も使っちゃいました♪

 年齢認証?

 購入上限金額?

 知らない言葉です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る