妄想遊戯のガールズスキャット15
私とケイとメグの三人でイマジンの暴走を止めていた時期があった。それが正しいことだと信じてね。イマジンの暴走と言うのは誰にでもあり得ることなんだ。妄想が暴走して現実を侵食して現実を塗りつぶす。そして何も無かったことになる。
ある意味で言えば、世界に変化は無い。最初から無かったことになるから
それでもケイはおかしいと主張していた。最初から無かったことになったとしても、例え自己満足だったとしても救える物は救いたいと。
メグも同調していた。いや、メグはケイを心酔していた。ケイの言う事に反論するところを見たことが無かった。
そんな私は彼女達の暇つぶしに付き合うことにした。
私たちの活動はほどほどに上手くいっていたと思う。少なくとも私たちはイマジンの使い方が上手になっていった。慢心する程度にはね。
そんな時期だったかな。ミカエルに出合ったのは。
それはとある母子家庭であったイマジンの暴走。
きっと母親が育児とか生活に疲れていたんだろうね。その親子は無理心中を考えていたんだ。そのままだと本当に無理心中するんじゃないかとケイが心配して、その場に向かったんだ。私たちは母親の方を止めた。
私たちはそのイマジンが誰の物かを勘違いしていたんだよ。
イマジンの主はその子供の方だった。辛い生活で虐待されていて、その延長上で親を殺してしまいたいと考えてしまったんだ。
私たちが母親だと勘違いした結果。その妄想は現実になり固定化された。
イマジンの特徴の一つにね。あった事を無かったことにするのは簡単だけど、無い物をあった事にするのは難しいって事なんだよ。
ライ麦畑で食べたクッキーが美味しくないのは想像が難しいからだ。
そしてみのりがメグそっくりなのは、メグがイマジンの能力で想像できる人間が自分だけだったって事だよ。
そしてその子供の暴走は止まらなかった。
自ら母親を殺した理由を正当化するために、イマジンを使って人を殺し始めた。死にたがっている。困っている人を殺しているだけで、それは正しいことだ。その正しいことの中に母親が入ってしまっただけだと。
私はその子が可愛そうでしょうがなかった。私はイマジンとかそう言うのとは関係無しに、その子を救済すべきだと主張した。
しかしケイは殺すべきだと主張した。可愛そうな子であるし、その原因に私たちが荷担しているのもある。それでも殺すべきだと。
結局わたしもケイに押されてミカエルと自称する少女を殺す事になった。
わたしの一瞬の判断ミスでミカエルとケイが相打ちをする形で妄想の世界に引きずりこまれた。
「色々おかしくありません?」
矛盾と言うか、納得出来ないお話でした。
「ケイが蘇生出来てないのにどうしてカエルちゃんは蘇生出来てるんですか?」
「それは理由が二つある。そのミカエルは私たちの知っているミカエルの残像みたいなものでミカエル本人じゃない。だからミカエルは自分の誕生日や好きな物なんかを知らない。ただ、単に人を殺し続けるイマジンの持ち主だ」
世界の代行者。本当に代行するだけの存在。そこには意思とか人生とか生きている意味とか無いのでしょうね。
「では本物のケイは?」
話を聞いている限りケイはメグと美春と仲が良かった見たいですし、それ以外の人とも仲良しさんみたいです。つまりケイのいる世界を常識に戻すのは難しくなさそうに思います。
「メグが妨害している。メグがケイに成るのに一番の邪魔はケイ本人だからな。もしもメグが自分の存在に納得出来たらケイは戻ってこれるかもしれないな。ケイはこの世界から完全には消えていない。メグがケイの代わりをしているから現実世界としてはケイは家で中って状態だ。だからケイは戻ってこれる」
「ならメグが納得すれば良いんですね」
もしかしたら私が消えそうな展開ですけど、まぁ死にたがってるのでグッドエンドに分類しても良いでしょう。
「そう納得するはずだった。ミカエルを倒し、君を助けることによって、ミカエルの時の失敗を取り戻す事ができるはずだった。
しかし実際は違ったミカエルを倒すはずだったのに君が倒してしまった。さらに君に助けられてしまった。そんなのメグの望むケイでは無い。
どこかで妄想が入り交じったんだ。その結果としてメグが望んだ妄想が手に入らなかった」
思い辺りがあった。
いやそれしか無かった。
「すみれ」
私は友達の名前を呼ぶ。
「江藤すみれ、私の友達で、私の高校で死闘をカエルちゃんと戦っている時に彼女は起きていました」
「あれ? 全員殺したんじゃ無かったの?」
「お姉ちゃんが友達だからとりあえず蘇生したんだよね。優しいのは良いんだけど、あんな死体だらけの教室で放置するのはドエスだと思うよ」
……殺して放置しておくべきでしたね。
「ならそのすみれって子が原因じゃないのかすみれの妄想とメグの妄想が混じり合った結果がこの前の戦いの結果だ」
私は大きな勘違いをしていた事に気付きました。
「すみれは前からイマジンだったかも知れません。すみれは友達が欲しかったんです。その友達として私が選ばれたのは私自身がイマジンによって生まれた存在だから、つまり動かしやすい立ち位置だったから」
カエルちゃんが代行者としてラスボスとして敵を演じられた様に、私はすみれの友達として、ケイを頼る後輩の役割を演じる丁度良い道具だった。
「問題はすみれの妄想とケイの妄想では私の立ち位置が違った事ですね」
すみれは話しやすく頼れる友人を望み、ケイは頼ってくれるか弱い自分のような存在を望んだ。
世界がぐらりと揺れました。
妄想と妄想が入り交じり、現実は塗り替えられていくのが解ります。
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