妄想遊戯のガールズスキャット14
そこに映っているのはどう見ても私でした。私に双子の妹がいるとかそんなミステリーのトリックみたいな事はありません。
と言うかいたら私の宿題全部そいつにやらせます。
「だから私はケイに干渉。いいえ、メグに干渉するのを止めたの。彼女はケイが死んだのは自分の責任だと思い込んだの。本当に悪いのは私なのに、でもメグは優しすぎた」
「それで自分をケイだと思い込んでいるんですか?」
「普通ならそれで終わりでしょうね。最悪な事に私たちはイマジンなの。メグは不完全ながらもケイになれてしまう。
メグはよくケイに助けられていたの。成績は優秀だったけど運動神経とか悪かったし、イマジンとしてもあまり優秀じゃ無くてよくケイに助けて貰ってた。だから私よりもケイに懐いていたわね」
「美春さんはメグの事がお嫌いですか?」
「嫌いって訳じゃ無いけど、私としては学業では学年トップを狙うライバル同士だったから」
美春さんが悪人には見えませんし、まぁ運が悪かったと言う事でしょう。
「メグにとってケイは正義の味方だったんだ。どんな時も格好良くて勇ましくてどんな相手でもひるまない正義の味方。メグはケイが居ない分ケイのようにならなきゃいけないと思い込んだんでしょうね」
「随分と分析してますね」
「それぐらいしか私には出来なかった。干渉しないなんてカッコつけて言ったけど、アレはほとんど嘘同然よ。干渉できなかった。メグが常時構築したイマジンはレベル2と3の合間を行き来していた。下手に手を出したらどうなるか解らない」
「イマジンを常時構築していた?」
確かに私も今イマジンを使用しています。しかしそのような高レベルのイマジンをケイが常に使っていたならばさすがの私にだって解るでしょう。
「じゃあもっと簡潔に言いましょう。大杉みのり。貴方は見原恵が自分をケイと思い込むために作られた人間よ」
「へー」
知らなかった。
「―――反応薄いわね」
「親から生まれようがケイの想像で生まれようが私が私である事実に何も変わりませんからね」
と言うか死にたがってる人間に何から生まれてきた何て言われても、特に興味ありません。
もう授業だの、ケイのお見舞いだの、言っている状態ではありませんでした。私はとりあえずカエルちゃんの居た世界に美春さんを引き込みました。
「レベル3の世界を安定して顕現させるなんて、本物のケイだって出来なかったわよ」
「そうなんですか? 一回カエルちゃんに呼ばれてからけっこう簡単にできるようになりましたよ。と言ってもこの世界だけですけどね」
延々と広がる麦畑は何度見ても奇麗でした。
「簡単な理由、それはね。私がいるんだもん」
私とケイは思わず振り返ります。
だって、その声は、
「お姉ちゃん昨日ぶりだね」
「カエルちゃーんん!!」
思わず飛びついてしまった。
言葉に出来ない悲鳴をカエルちゃんがしていますが、無視します。カエルちゃんも私にあえて興奮を隠しきれないだけでしょう。
「お姉ちゃん苦しいよ」
「もう死んじゃったのかと思ったよ」
「殺した奴の言う台詞がそれか。どういう関係してるんだよあんた達」
美春さんがわざとらしく肩をすくめました。
私たちは糞不味いティーパーティーを始めました。
「カエルちゃんはケイの代行者って事で良いの?」
メグがケイに成りたかった。その為には必要な物が二つあります。
一つはメグのポジション、そしてもう一つが敵のポジション。
「そう、ケイがお姉ちゃんにカッコイイ所を見せつけたいが為にイマジンによって召喚された可愛そうな子。それが私だよ。ほんとどうして生きてるんだろうね。殺したり殺されたり忙しいよ」
「そうだ。美春さんは生きている意味ってどういうことだと思いますか?」
「私そう言う事あんまり考えないの。成績優秀だからと言って思想が優秀なわけでは無いのよ。と言うか夢に向かって頑張るじゃいけないの?」
「私にはそれじゃ駄目なんだよ。美春お姉ちゃん」
すでに死にそして人の都合によって生き返る事を強要された少女。カエルちゃんにしてみれば生きている事の存在意義は限り無く希薄になってしまうでしょう。
生きていようが死んでいようが、代わり映えしないのですから。
「そうね。本物のケイの言葉を借りてきましょうか」
「本物のケイと私の知っているケイってそんなに違うんですか?」
「似てるのなんて見た目だけよ。ケイは本物のカリスマだった。人を呼び寄せる感性を持っていた。きっと有りとあらゆる人間はケイから自らと同じ欠落を見つけて同士と思うのでしょうね」
「だったら私とは仲良くなれそうにありませんね」
「どうして?」
美春さんは紅茶を飲みながら聞きます。あまりのまずさに若干顔を渋めながら。
「私は欠落だけで出来ていますから」
「そこだけ聞くとメグのイマジンは全て上手くいっていたように思うんだけどなぁ。メグはそう言う後ろ向きな発言をよくしていた」
美春さんはクッキーも一口。やっぱり不味かったのか顔が渋い。
「ケイは言っていたよ人生なんてスキャットと一緒だと」
「スキャット?」
カエルちゃんぐらいの年齢だとスキャットと言われても解らないのも当然かもしれませんね。ここはお姉さんとして、お姉さんの威厳を保つ為にも解説を加えましょう。
「スキャットってアレですよね。スキャットマンって方の歌でビーバッポって歌う部分の所ですよね?」
本人は吃音症でうまく喋る事ができません。それを逆手にとって普通の人には発言不可能な音を口から出すことによって独自の音楽を開拓した方です。
だからこそスキャットマンは自らの歌に同じ病状で悩む人達の励みになるような歌詞にしていたそうです。
「そう。人生なんてのはスキャットの歌詞と一緒。意味なんて無い。その場その場のリズムだけがある。私には良くわからない生き方だよ」
「刹那的な生き方をしている方と言う事でしょうか?」
「私はケイの言ってる事全然解らなかったわよ。抽象的過ぎる発言が多すぎるもの」
理詰めな美春さんとその場のケイ。
どう考えても相性が悪いでしょうね。
「全然わかんないよ!」
カエルちゃんがキレました。まぁカエルちゃんからしてみたら深刻な悩みでしょうからね。
「まず私はミカエルを殺す事に反対だった。二人に押し切られる形で助成する事にはなったが、気乗りはしなかった。今更謝っても許してもらえるとは思わない。でもごめんなさい」
美春さんは椅子から降りてカエルちゃんに土下座しました。
「もういいよ。全部おわっちゃった事だもん」
「それでもだ。君は悪くない」
「ううん。ミカエルになるって決めたとき私は私の罪を被るって決めたから」
この三人で話してると一人は完全に蚊帳の外になるのって、どうにかならないでしょうか? 友達だからその場から離れる訳にもいかないですし、ましてや今回はかなり大事な話をしていますからトイレに逃げ込む訳にもいきません。
と言うかトイレに逃げ込むのは会話を強引にねじ曲げる用ですけどね。
女の友情はトイレで出来ていると言っても過言ではありませんから。
「カエルちゃんはどうして人殺しなんて始めたの?」
私はカエルちゃんがただの快楽殺人鬼には思えません。ケイにとっては倒すべき敵が絶対的な悪である必要があったからそう言っていたのでしょう。
しかし私がケイに作られた存在であり、
ケイの妄想が暴走しているのが現実世界だと解ってしまった以上。
私がケイをどうにかしたい。
「それは私が説明しよう。ミカエルにそれを喋らせるのはあんまりにも酷な話だ。これでせてもの罪滅ぼしになれば良いんだがな」
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