妄想遊戯のガールズスキャット12

 ケイは唖然としてました。


 そりゃ校庭でラスボス候補のカエルちゃんと、ボール遊びしながら待ってたらそうもなるでしょう。なおすみれちゃんには眠って貰っています。あと、カエルちゃんにはすみれちゃんの事を正直に話してあります。


『人質取るような作戦はしないよ』

『それを聞いて安心しました』


 その作戦をしてきたらすみれちゃんごと殺す予定でしたから。

 ……私はいつから殺すなんて言葉を軽く使う女の子になってしまったのでしょうか?


 最初は雑談でもしながら待とう思ったのですが、それはそれで退屈と言う事でボール遊びになってしまいました。


 小学生の子と遊ぶとなるとドッジボール投げ合うぐらいしか出来ませんが、カエルちゃんは大喜びしてくれたので私としても最高です。


「おそーい」

「ケイの学校から来てもこんなに時間はかからないと思うのですが、何か用事でもありましたか?」


 ケイの学校から普通に来ても1時間もかからないはずなんですけどね。まぁおかげでカエルちゃんと楽しくお話出来たので良しとしましょう。

 だんだんと私の性癖がおかしくなっていくのを感じますが、気にしないことにします。


「みのり、そいつが何をしたか解ってるの?」

「学校ごと皆殺しの犯人ですよ」

「そいつとボール遊びして待つってどういう神経してるんだよ!!」

「基本的に流されっぱなしな私ですけど、できれば公平でありたいんです。どうしてカエルちゃんがこういうことをしているのか、私は知りたいんです。結局カエルちゃんは戦う事を望んで教えてくれませんでしたので、ケイと協力してカエルちゃんを倒そうと思います」

「人殺しに良いも悪いもあるか!」


 ケイは両手に大剣を握りしめ一気に走り込んできました。


「ごめんねカエルちゃん」

「謝らないで。最初から代行者として決まっていたことだもん」


 あぁ笑顔が可愛い。待ち受け画面にしたい。

 私はキャロに変身してケイに魔法をかけます


「クイックタイム」


 とほぼ同時にカエルちゃんにも魔法をかけます。


「スロータイム」


 時間の加速と減速の魔法。


「正義を執行します」


 そうカエルちゃんが言うと天使の翼が生えてきました。カエルちゃんマジ天使。

 ケイの大剣を盾で奇麗にかわすと空中へ一気に退避しました。遅くした状態でも一般的な鷹ぐらいの速度があります。


 さすがラスボスです。


「フロストアロー!」


 ケイが言うにはカエルちゃんもずっとは飛んでいられないとの事です。地面に降り立った瞬間にそこを一気に叩く。これが作戦。私はひたすら飛んでいるカエルちゃんを魔法で地味に削っていきます。

 フロストアローの強さは当たったら氷の異常状態によって一時的に使用不可になることです。


 カエルちゃんはエタマジをプレイしていなかったのでしょう。フロストアローを盾で受け取ってしまいました。


 当然盾を持っている左腕は当面の合間は使用不能になります。

 しかしキャロのダメージ源はこれだけではありません。


「ミルウィンドウ」 


 風による広範囲攻撃。アシストして良し広範囲攻撃もあり、一撃必殺もある。

 汎用性において最強のキャラであるキャロにキツい局面は存在しません。

 盾による防御を防がれたカエルちゃんはこの広範囲攻撃を飛行による回避しかできません。


 魔法の連打で制空権をどんどんと奪っていきます。そしてグラウンドに着地するしかできないような状況に追い込みました。


 地面と着地するとほぼ同時にケイが一気に距離を積めて大剣をたたき落としました。


終わってない。


 私はキャロであることを止めてクラゲになって触手をケイのいるところまで伸ばして自分の所にまで引き戻しました。その直後にカエルちゃんは爆発してしまいました。



 カエルちゃんの居たところは燃えさかっていました。この自爆は意趣返しと言った所でしょうか? 自分も相打ちに持ちこまれたから、今度は自分から相打ちに持ちこむ。仲良く遊んではいましたが、さすがにお互いの手の内までは見せてはいません。


 カエルちゃんの代行者としての仕事はこれで終わりなのでしょうか?

 お仕事失敗にしか見えません……


 でも、今はそんなことよりももっと大事な事があります。


「良かったケイを助けられて」


 私が私でいるから必要としてくれている。そんなケイを助けられた事が今は一番嬉しい。


 私はガラにもなく思わずケイに抱きついてしまいました。


「ケイに助けて貰ったからケイを助けることが出来た。私、珍しく生きていて良かったなと思います」


 私は無価値で、無意味で、クラゲであるけれど、ケイは違う。誰かを助けようとして、いつも頑張っている。そんなケイの役に立ったのならきっと私にも生きている意味があったのだと思います。


 どうして生きているのか。

 これが答えでは駄目なのでしょうか?


「ケイ?」


 戦いが終わったと言うのにケイは不満げな顔をしていました。


「生理ですか?」

「いや、そう言うわけじゃ無いけど……」

「自称ラスボスが弱すぎて裏ボスが居そうと言う話でしたら私もそう思います。アールピージーのお約束ですよね」


 エタマジでもストーリーボスよりも強いキャラがわんさか居ます。ゲームに慣れすぎた私たちの世代はどうしてもゲームの流れを想定してしまいますね。

 あとハリウッド映画のやったか!? とか


「とにかく、戦いは終わったんですから学校を元に戻しましょう」


 少なくともカエルちゃんとの戦いはコレで終わるはずです。


めでたし。めでたし。でなくては……

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